日本郵政は経営不振の豪物流会社トール・ホールディングスを売却する方針を固め、ファイナンシャル・アドバイザーとして証券会社2社を選定する作業に入った。傘下の日本郵便による国際物流事業への本格進出の足がかりと位置づけていたトールだが、業績不振から脱することができないため、売却の判断に踏み切る。日本郵便の成長戦略は大幅な見直しに直面することになる。(ダイヤモンド編集部副編集長 布施太郎)
トールの自力再建を断念
国際物流業務から撤退へ
複数の関係者によると、日本郵政は今週に入って、トール売却の実務を担うファイナンシャル・アドバイザーを選ぶため、野村證券やゴールドマン・サックス証券など国内外の複数の証券会社に打診を始めた。8月までに外資1社、国内証券1社の2社を選び、国内外でトールの買い手を探す作業を本格化させる。
日本郵政グループは2015年の株式上場の際、傘下の日本郵便の成長戦略の一環として、豪州に本社を置き、アジア・オセアニア地域での国際物流業務に強みを持つとされたトールを約6200億円で買収した。しかし、資源価格の下落による豪州経済の停滞がトールの業績を直撃し、日本郵政は17年3月期に4000億円の減損損失を計上。
業績回復のために、トールの経営陣を刷新したほか、日本郵便から幹部を派遣し、テコ入れを図ってきた。人員削減や業務の見直しなども進めてきたが、20年3月期には約86億円の営業損失を計上するなど、業績不振から脱却できていない。日本郵政は今春、野村證券のアドバイスを受けて日本郵便とトールのシナジー効果の検証や、事業売却による再建策などを検討したものの、トールの自力再建は困難と判断したとみられる。