トール売却、先行きは不透明
持参金なしでは無理との指摘も

 トールの売却に向けて具体的なプロセスに入ったものの、実際に売却できるかどうかは不透明だ。

 ある外資系証券幹部は「トールの事業はボロボロ。関心を示す企業が現れたとしても持参金を付けるぐらいでないと、とてもではないが売れない」と指摘する。日本郵政のある幹部は、そもそも2015年の買収当時、上場を前にした成長戦略の打ち出しに焦るあまり「トールの資産査定が甘かった。もともと事業の価値が低い」と打ち明ける。

 コロナ下で事業の先行きを見通すのが困難になっている中、M&A案件は将来の事業価値の算定が難しくなっている。「売り案件は特に厳しい」(前述の外資系証券幹部)との声も出ており、トールの引き受け手はすんなりと現れそうにもない。

 日本郵政グループは、かんぽの不正販売問題が尾を引いているのに加え、トール売却の方向性は日本郵便の成長路線の主軸と位置づけられていた国際物流業務からの撤退となる。世界的な低金利で運用難に陥っているゆうちょ銀行も収益の壁に直面しており、日本郵政グループは、収益・ガバナンスの各方面で抜本的な改革が不可避な情勢だ。