次に、エネルギー製造段階でのCO2排出。これは一般に、ウェル・トゥ・タンク=油井から燃料タンク(バッテリー)までと呼ばれ、WtTと記される計算値である。

 e-ゴルフとゴルフ・ディーゼルをそれぞれ20万km走らせたときのCO2排出計算値は、ディーゼル車で使う軽油が11g/㎞、風力発電による電力が2g/㎞、ドイツ国内の発電穂方法平均だと85g/㎞、EU加盟国の発電方法平均では62g/㎞、中国の発電方法平均だと126g/㎞というものだった。

 そして、クルマが走行する段階で排出するCO2、いわゆるタンク・トゥ・ホイール=燃料タンク(バッテリー)から車輪までと呼ばれる領域=TtWと前述のWtTのCO2排出量をすべて合計したものが、製造から使用までのトータルのCO2排出量である。

新型ID.3は
カーボンニュートラル生産

 VWによると、現在「ID.3」を製造するツヴィッカウ工場はカーボンニュートラル生産であるという。つまりTtWのCO2排出はゼロになる。しかし、廃棄やリサイクルまで含めた「すべての段階を合計するとゼロにはならない」と説明している。

 7thゴルフのディーゼル車はトータルのCO2排出量が140g/㎞になる。同じボディを使うeゴルフの場合、風力発電だけを利用すれば車両製造段階とエネルギー製造段階の合計である59g/㎞で済むが、褐炭・泥炭・CNG(圧縮天然ガス)による火力発電が30%ほど含まれるドイツ国内の電力を使うと142g/㎞になる。

 EU平均の発電ミックスによる電力では119g/㎞だ。EU平均でのCO2排出量が下がる理由は、再生可能エネルギーによる発電と原子力発電の比率が増えるためだ。

 一方、米国の電力を使うとeゴルフはドイツの電力ミックスと同じ142g/㎞になる。しかし、石炭火力が半分を占める中国での電力を使うと一気に183g/㎞となり、ディーゼル車を上回ってしまう。VWが公開したデータを読む限り、ドイツ国内の現在の発電インフラを使うと、BEVのLCA(ライフ・サイクル・アセスメント)的視点に基づいたCO2排出量はディーゼル車とほとんど変わらない。米国も同じだ。中国ではディーゼル車のほうがはるかにCO2排出は少なくなる。