2012年9月4日(火)から、立命館大学政策科学部の「研究入門フォーラム」というプログラムの一環として、学生15人と英国フィールドワークを行っている(9月12日までの予定)。これは学部2回生を対象に、フィールドワークを実際に体験させるプログラムで、国内のさまざまな自治体への訪問の他に、フランス、カナダ、中国、韓国、タイ、英国の海外フィールドワークのプログラムもある。私は今年度プログラムの担当ではないが、学生引率の1人として英国プロジェクトに参加している。今回の訪問先は、昨年に引き続いてHSBC、BPなどの企業、英国の地方行政機関、NGOなど多岐に渡るが、今回は英国の「製造業」に焦点を当てる。

昨年度のフィールドワーク:
「UK社会構造化モデル」

 まず、この連載でも取り上げた、昨年度のフィールドワークの取り組みと成果を振り返る(第19回第20回を参照のこと)。昨年度は、メインの研究テーマを「若者の雇用問題」とした。まず、日本の若者の就職活動の範囲を急成長するアジア地域まで拡大して雇用のパイを大きくすることが「雇用対策」だという問題意識を持ち(第8回を参照のこと)、アジアで日本の若者の競争相手となる中国、香港、シンガポール、マレーシアなどの若者を留学生として受け入れ、語学や専門知識を習得させて育てている英国の大学を調査した。そして、英国の大学が築いているアジアなど海外との間の「人材還流システム」を理解した(第19回8ページを参照のこと)。

 英国は戦略的にアジアから多数の留学生を獲得し、留学生のニーズに合う実学教育を推進し、「英国ファン」を生み出す。そして、英国の大学院を修了すれば、母国で国家エリートになれるし、「グローバル企業」に就職できるとなれるキャリア・ルートを確立している。その具体例として、また、サリー大学の海外30ヵ国以上のグローバル企業との長期研修制度の調査も行った(第19回7ページを参照のこと)。

 また、昨年度は「英国社会」の構造に焦点を当てた研究を行った。英国社会とは小さなブリテン島の「政府」だけではなく、「英連邦」を中心とした世界中に広がる「国際化した大学のネットワーク」「グローバル企業」「市民社会」によって成り立っているという視点を持ち、学生のさまざまな組織に対する聴き取り調査を基に、「UK社会構造化モデル」を作成した(第20回2ページを参照のこと)。