損失補填と利益供与事件、そして今回の増資インサイダー事件と数々の不祥事を繰り返した野村は、永井CEOの下、新たに生まれ変わることが求められている
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 いわゆる増資インサイダー事件を受けて、経営陣が刷新された野村ホールディングス。8月1日に新たにトップに立った永井浩二グループCEO(最高経営責任者)と吉川淳グループCOO(最高執行責任者)は、9月6日に新たな経営戦略を発表した。

 ポイントは大きく二つある。

 一つ目は2014年3月末までに、ホールセール(法人営業)部門でコストを10億ドル(約800億円)削減すること。前期のホールセール部門のコストは約6000億円であり、実現すれば約13%のコスト削減となる。

 野村は昨秋から12億ドル(約950億円)のコスト削減に取り組んできたが、欧州債務危機などにより収益環境が依然として厳しいため、さらなるコスト削減に踏み込まざるを得なくなった。

 これまでのコスト削減は、リーマン・ブラザーズの欧州・アジア部門買収以降に急増した高給取りの外国人社員が中心だったが、今回はそれら外国人社員を含めた営業部門のみならず、管理部門に至るまで対象となる。

 二つ目は、創業90周年を迎える16年3月期の収益目標を掲げたことだ。主要3部門を合計した税引き前利益で2500億円を目指すという計画で、前期の3部門の実績は461億円であり、実に5倍強の目標となる。

 その内訳は、ホールセール部門で1250億円、リテール(国内営業)部門で1000億円、アセットマネジメント(資産運用)部門で250億円とした。

 目標達成への最大の課題は、赤字続きの海外事業を抱えるホールセール部門だ。目標額の1250億円のうち、海外で500億円(国内では750億円)を稼ぐ計画だが、事はそう単純ではない。

 前期のホールセール部門は376億円の赤字に沈み、とりわけ欧州事業は、915億円もの巨額赤字を計上しているからだ。