そして、当たり前のことですが、総理一人が改革派だからといって改革が進むなんてことは絶対にありません。やはり、改革を進めるための手足が必要となります。

 そのための手足としてまず思いつくのは、経済財政諮問会議です。諮問会議は今でこそ官僚主導の普通の審議会に落ちぶれてしまいましたが、改革が進んだ小泉政権の頃は、政治主導による構造改革の司令塔として機能していました。ちなみに、機能した理由は簡単で、担当大臣が改革派だったことに尽きます。

 ただ、もちろんそれが唯一の手足ではありません。菅政権での改革を担うまったく新しい会議体を官邸に設置したり、会議体を設置せずに総理の号令と官邸のサポートの下で担当大臣にしゃかりきに頑張らせたりという、少数の政治家による完全なトップダウンをやるという手も考えられます。

 要は、政治主導で改革を進める手段は幾つもあるのですが、そこで大事なのは、本当の改革派の政治家を、改革を進めたい分野を所管する大臣に任命できるかです。実はこれが非常に大変と思います。その理由は、第一に自民党に本当の改革派の政治家は非常に少なく、かつ総裁選で多くの派閥に応援してもらった以上、閣僚人事で派閥を無視した自由な人事は難しいだろうからです。

 逆に言えば、菅内閣の組閣の段階で、ごく少数の本当の改革派が大臣に任命されるか、そしてどのポストに就くかを見れば、菅政権の改革への本気度、そしてどの分野で真剣に改革を進めようとしているかがある程度見えてくると思います。

改革派が大臣に任命されるかを注目しよう

 そう考えると、メディアや評論家は「誰が菅政権の官房長官になるか」といったことばかりを話題にしていますが、これは的外れだと思います。

 菅政権が実現すれば、小泉政権以来14年ぶりに改革を指向する政権が誕生することになるのです。だからこそ、誰が官房長官になるかも確かに大事ですが、改革派が閣内にちゃんと入るかにも注目すべきではないでしょうか。

 かつ、メディアによってはもう「誰が菅氏の次の総理候補か」といったことまで話題にしていますが、菅氏を来年秋の自民党総裁任期までの暫定総理みたいに考えるのもひどいと思います。

 私は菅氏を小泉政権の頃からもう20年近く存じ上げているのですが、そこでの経験から、菅氏の改革姿勢や手腕には全幅の信頼を寄せています。だからこそ、菅政権が小泉政権以来、久々の本格的な改革政権として長期政権になってほしいと期待しています。

 いずれにしても、菅総理の組閣人事が、菅政権が本当の改革政権になれるかの最初の試金石になると思います。コロナ対応は徹底的にバラマキを行い、それ以外では徹底的に改革を進める政権になることを期待して、組閣人事でお手並みを拝見しましょう。

(慶應義塾大学大学院 メディアデザイン研究科 教授 岸 博幸)