残念ながら、それも解決策にはなりません。

もちろん、「忖度」が常に悪いわけではありません。

友人たちとの和を乱さず、人間関係の調和を保つのは大切。

「村八分」の一匹狼の人生は悲劇です。

ただ一方で、「忖度」しすぎる危険性にも十分注意しておきましょう。

たとえば、職場で忖度ばかりしていると、イノベーションが生まれにくくなります。

違う意見が堂々といえる。多様なものの見方をぶつけ合える。対立を恐れず、妥協点を探る意識がある。そういった職場でこそ、イノべーションが生まれやすいことがわかっています。

また、できる人であればあるほど「忖度マインド」に陥って他人の期待に応えすぎてしまい、悲劇につながってしまうこともわかってきました。

多くの職場は、ごくわずかな「スーパーコラボレーター」に依存しています。

スーパーコラボレーターは、いろいろなプロジェクトやその他の仕事の助言や手伝いに引っ張りだこ。

結果、多くの仕事がその人に集中します。

するとプロジェクトが滞(とどこお)り、チーム全体の生産性が落ちます。

それだけではありません。

スーパーコラボレーターは出世街道から取り残されてしまい、多忙なうえに上司から評価されず、「コラボ疲れ」で離職するケースも多いのです。

「自己中」に焚きつけられながら「忖度」も期待される。

しかし、どちらに転んでも悲劇が訪れる。

では、どうしたらいいのでしょうか。

答えは、本書第1講にあるように、最新科学やビジネス理論にはっきり示されています。

それは、利他的マインドに基づく「生き抜く力」です。

「自己中」ではなく、相手のいうことをよく聞いて理解する。

「忖度」ではなく、心底相手に共感する。そのうえで、相手に献身的な行動を取る。

そうした利他的な行動が「生き抜く力」の源泉にあることは、シリコンバレーや先端科学を待たずして、長きにわたる人類の歴史の中で示されてきたことでもあります。

本書第2講では、本講で論じた科学やビジネスの視点を超えて、さらにディープな「生き抜く力」の思想の世界へ踏み込んでいきましょう。

古今東西、哲学や宗教の視点から、仏教にキリスト教、武士道、儒教、西洋哲学に至る

まで「生き抜く力」を見つめ直すことで新たな発見を得ることになるでしょう。