(2)の中位所得者の所得が増えていないというのはどうか。確かに、世帯当たりの平均所得、特に中位所得(所得の高い人から低い人を並べて真ん中の人の所得)が増えていないのは事実である。

 厚生労働省「国民生活基礎調査」によれば、世帯当たりの中位所得は12年から18年まで6年かけて432万円から437万円と1.2%しか増えていない。しかし、これは世帯当たりの人数が減っているからである。図2で、世帯人数当たりの平均所得、中位所得を見れば、それぞれ8.3%、6.5%と増えている。

 世帯当たりでなく、むしろ1人当たりの所得を考えるべきである。図3は給与所得者の所得階級別の人数とシェアを見たものである。図には、人数(白字)とシェア(黒字)の両方の数字を書き込んである。

 アベノミクスの開始以前の12年、年収400万円未満の人は2688万人いたのだが18年には2726万人と1.4%しか増えていない。一方、年収400万~800万円未満の人は1503万人から1813万人と20.6%も増えている。800万円以上の人は365万人から487万人と33.4%も増えている。つまり、中位以上の所得の人は増えているのである。

 図にはそれぞれの所得の人のシェアも記している。割合で見ても、400万円以下の所得の人が減少し、400万円超、800万円超の所得の人が増えている。アベノミクスは、多くの人に恩恵をもたらしたのである。

継承と前進は当たり前のこと

 自民党員は、コロナ以前の7年間を冷静に考えてみると、やはり自分たちの所得は増えて、貧しい人がさらに増えたわけでもないと思ったのだろう。自民党員は、所得中位以上の方が多いだろうし、雇用主として、人出不足と最低賃金引き上げに応じて賃金を上げてきた方も多いだろう。

 自分が従業員に払う賃金を一生懸命上げてきたのに、なんで党のリーダーは貧しい人が増えたというのかと心外に思った方も多かったのではないか。継承と前進は当たり前のことで、事実を把握した菅氏の圧勝は当然だったのではないか。