ピンクリボンPhoto:PIXTA

 毎年10月は乳がん啓発の「ピンクリボン月間」だ。

 今年の春先はSARS-CoV-2(新型コロナウイルス)感染を恐れ、企業検診などが軒並み延期されたが、「マスク着用」と「3密(密閉、密接、密集)の回避」で感染リスクを避けられることがわかり、徐々に再開されている。

 乳がん検診は40歳以上、2年間隔の受診が推奨されているので、ここで1年延期すると自費受診しない限り計3年間の空白期間ができてしまう。受診年に該当する方は、検診を受けてほしい。

 日本乳がん検診学会は、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)流行下の検診マニュアルを公開している。それによると、検査技師と受診者が互いにマスクを着用していれば、超音波検診、マンモグラフィー検診とも「濃厚接触」とはならず、感染リスクは低い。受診者も当日朝の検温と手指消毒の徹底を心掛けると安心だ。

 乳がん検診の推奨年齢をめぐっては色々と議論がある。たとえば米国予防医学専門委員会(USPSTF)が50歳以上、2年間隔を推奨(年齢上限は74歳)しているのに対し、米国のがん協会(ACS)は40~44歳は任意で1年ごとに、45~54歳は毎年、その後は2年ごとの受診を推奨している(年齢の上限なし)。

 この混乱は、40代のマンモグラフィー検診が確実に死亡率を下げるという根拠に乏しかったためだ。

 しかし先日、英国からおよそ16万人の女性を対象とした調査結果が報告された。39~41歳からの検診群、50歳から検診を始める対照群に分け、23年間追跡したもの。

 それによると40歳前後で検診をスタートした女性たちの乳がん死率は、その後10年間を通じ対照群よりも25%低下することが示された。10年を過ぎた後の死亡率は対照群とほぼ同じだった。つまり、乳がん検診で40代の早過ぎる死を防ぐ効果が期待できるわけだ。

 日本では乳がんと診断される年齢のピークが40代後半と60代前半にあり、40歳から乳がん検診を受けるメリットは大きい。

 人生真っ盛りの別離を避けるために、本人まかせではなく家族からも乳がん検診を勧めてください。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)