制度的には、近助タクシーは地域住民の皆さんがドライバーとなる、道路運送法第78条の自家用有償旅客運送という形式であり、これは全国各地で実施されており、決して珍しいやり方ではない。

 だが、近助タクシーは将来に向けてさまざまな可能性を加味して計画された

各地域での
社会変化に応じた発想

 まず、永平寺町を俯瞰(ふかん)していただきたい。

 永平寺町は世帯数6442、人口1万8341人(2020年10月1日時点)。

近助タクシーが運航する志比北地区は、町の中でも高齢化率が4割と高め。コミュニティバスの乗車数も少ない近助タクシーが運航する志比北地区は、町の中でも高齢化率が4割と高め。コミュニティバスの乗車数も少ない Photo by K.M.

 総面積は94.43キロ平方メートル。日本海の三国湊と山間地の奥越を結ぶ九頭竜川に沿うように横に長い形状をしている。

 2006年に松岡町、永平寺町、そして上志比村の3市町村が合併しており、そのため、旧3町村それぞれの地域で社会背景に違いがある。

 旧松岡町は、隣接する福井市で就業する人が多く、複数台の乗用車を所有する新しい戸建て住宅も目立つ。

 旧永平寺町では、永平寺につながる志比谷にある6キロメートルの遊歩道に自動走行車が実用化を目指して走行している。

 そして、旧上志比村は県立恐竜博物館がある勝山市と隣接する中山間地域だ。

近助タクシーは、車内に高齢者向けの手すりなどを装着したトヨタ「エスクァイア」を活用。予約が多い場合に備えて、バンタイプの車両も用意近助タクシーは、車内に高齢者向けの手すりなどを装着したトヨタ「エスクァイア」を活用。予約が多い場合に備えて、バンタイプの車両も用意 Photo by K.M.

 こうした様々な社会背景がある地域を支える交通は、九頭竜川の南側を沿うように走る単線のえちぜん鉄道。また、福井市や坂井市など広域とも連結する京福バスの路線バスが運用されている。

 また、主要道路から少し離れた住居地域の中を走行する、コミュニティバスを拡充したが、旧3町村合併後のコミュニティバス路線の再編については、各地域の社会変化を考慮して慎重に行われてきた。

 そうした中、九頭竜川の北側に位置する志比北地区の地元住民でつくる振興連絡協議会、日本郵便、福井県トヨタ販売各社、そしてトヨタ自動車本社等が連携して、2019年11月から近助タクシーの試走を始めた。