天才たちは「眼のつけどころ」が違う

 さて、いま注目の「知覚力」を磨くためには「絵画を観察するように世界を見る技法」が有効だというお話をしてきました。

 絵画鑑賞がお好きな方であれば、「ちょっと面白そうだし、なんとなく役に立ちそうだな……」と感じていただけたでしょうか。

 しかし、多くの方はきっとまだ半信半疑だと思います。

 世界中の多くの現場で採用され、その効果が科学的に検証されているトレーニングだと言われても、心のどこかでは「絵を観るだけで、人間の認知能力が変化するなんて、にわかには信じがたいな……」と思っていらっしゃるのではないでしょうか。

 そんな人にぜひお伝えしておきたいのが、いわゆる成功者のなかには、「絵画を観察するように世界を見ている人」が驚くほどたくさん存在するということです。

 『知覚力を磨く』のなかに登場させた人物を少しだけ挙げると、アルベルト・アインシュタイン、ピーター・F・ドラッカー、黒澤明、ウォーレン・バフェット、チャールズ・シュワブ(チャールズ・シュワブ・コーポレーション創業者・会長)、トニー・シェイ(ザッポスCEO)、ポール・オーファラ(キンコーズ創業者)、柳井正、スティーブ・ジョブズ、イングヴァル・カンプラード(イケア創業者)などです。

 また、じつのところ、「ノーベル賞受賞者の90%以上がアート活動に関わっている」「アートの趣味を持っている科学者のほうが、そうでない科学者よりも2・85倍高い割合でノーベル賞を受賞している」といったデータもあります。

天才たちは「眼のつけどころ」が違う。ノーベル賞受賞者の9割が「アート愛好者」でもあるワケノーベル賞受賞者の9割以上が「アート愛好者」──アートを好む人の比率は、米国市民、米国科学アカデミー、王立協会、ノーベル賞受賞者と所属団体の格式が上がる順に高くなっており、ノーベル賞受賞者に至っては9割以上が美術を趣味としている。
Root-Bernstein, Robert et al., “Arts Foster Scientific Success: Avocations of Nobel, National Academy, Royal Society, and Sigma Xi Members,” Journal of Psychology of Science and Technology, Vol. 1, No. 2 (2008): 51-63.

 彼らが高い思考力・実行力を併せ持っていることはたしかでしょう。

 しかし、彼らのものの見方を分析すると、それ以前の段階、つまり、「どこに眼を向けて、何を感じ取るのか?」という知覚において、決定的な差がついていると考えざるを得ません。

 だとすれば、そんな知覚の力をみなさんも身につけてみたいと思いませんか?

(本原稿は、『知覚力を磨く──絵画を観察するように世界を見る技法』の内容を抜粋・編集したものです)