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新型コロナウィルスの影響で外出時間が減った今年、なんとなく日々重たいような気分を感じているという人も多いのではないだろうか。そんな中、世界最高の創造集団IDEOのフェローによるきわめて画期的な本が上陸した。『Joyful 感性を磨く本』(イングリッド・フェテル・リー著、櫻井祐子訳)だ。
著者によると、人の内面や感情は目に映る物質の色や光、形によって大きく左右されるという。つまり、人生の幸不幸はふだん目にするモノによって大きく変えることができるのだ。
本国アメリカでは、アリアナ・ハフィントン(ハフポスト創設者)「全く新しいアイデアを、完全に斬新な方法で取り上げた」、スーザン・ケイン(全米200万部ベストセラー『QUIET』著書)「この本には『何もかも』を変えてしまう力がある」と評した他、アダム・グラント(『GIVE & TAKE』著者)、デイヴィッド・ケリー(IDEO創設者)など、発売早々メディアで絶賛が続き、世界20ヵ国以上で刊行が決まるベストセラーとなっている。その驚きの内容とはどのようなものか。本書より、特別に一部を紹介したい。

明るい色は「心のカフェイン」になる

 明るい色は、目にカフェインのような刺激剤として働き、私たちを安住から引っ張り出す。

 アーティストのフェルナン・レジェは、ロッテルダムの改装されたばかりの建物について、こう語っている。「古い工場は暗くて陰鬱だった。新しい工場は明るく色とりどりになった。すると何かが起こった。労働者は人事には何も言わずに、みずから進んで清潔できちんとした服を身につけるようになった。……自分たちの周囲と内側で、何か重要なことが起こっているのを感じ取ったのだ」

 レジェが気づいたことがさらに大きなスケールでも起こることが、色と職場に関する包括的研究によって示されている。スウェーデン、アルゼンチン、サウジアラビア、イギリスの約1000人を対象とする研究で、明るく色彩豊かなオフィスで働く人は、薄暗い場所で働く人に比べ、より集中力が高く、喜びにあふれ、友好的で、自信に満ちていた

 ほとんどの学校の校舎やオフィスビルは、殺風景な色合いで刺激に乏しいため、心が落ち着かず、集中するのが難しい。生き生きとした色は、学習や生産、成長に必要なエネルギーを奮い立たせるのだ。(中略)

「身につけるもの」が力をくれる

 私は衣服についても考え始めた。「自分の就きたい仕事に見合った装いをしましょう」と、よくいわれる。なら、「自分のほしい喜びに見合った装い」をしたらどうだろう?

 本書で扱う「喜びの美学」について考え始めたころ、気の滅入る状況で明るい色を身につけたらどうなるかを実験してみた。

 タクシーのような黄色のゴムのレインブーツを買い、大雨の予報が出ると大喜びで履き、同じく黄色い傘をつかんで外へ飛び出し、雨を蹴散らしながら職場まで歩いた。

 独身時代、ぎこちないブラインドデートをやみくもにくり返していたころ、気合いを入れておしゃべりにのぞむために、明るいプリント柄のワンピースを買った。

 また最近、ライムグリーンのフィットネスウェアをプレゼントされた。目覚めてすぐその鮮やかな色を見ると、ベッドから起きてヨガをしようという気になる。いまではフィットネスウェアがくたびれると、大胆な色に買い換えるようにしている。

 友人のベスは、私の知っている人の中で最もカラフルな服を好んで着る人だが、鮮やかな装いが自分だけでなく、他人に与える影響まで考えて服選びをしている。ベスは身長が178センチと高く、とびきり聡明で、はっきりものを言うタイプだ。「生まれてこの方、威圧的だとか怖いとか言われ続けてきた」と彼女は言う。

 鮮やかな色を身につけることは、人に親しみを持ってもらい、先入観で判断されないようにするための、彼女なりの工夫だった。

 ベスは暗い色のコートを1枚も持っていない。黄や緑のような鮮やかな色合いのものばかりだ。憂鬱な冬の日には、道行く人たちがほほえみかけてくるという。カラフルな服装は、わびしい風景の中の小さな贈り物、喜びの輝点のように感じられるのだ。

 ベスと同じ職場で働いていたとき、同僚が「ベスになりきる日」を企画した。全員がピンクの水玉のパンツや黄色いセーター、ターコイズのドレスでやってきたものだから、まぶしくてサングラスが必要なほどだった。あの日は記憶に残る最高の一日になった。職場全体が活気づいたのだ。

(本稿は、イングリッド・フェテル・リー著『Joyful 感性を磨く本』からの抜粋です)