「会社に行く意味」とは?

 作家・研究者のカル・ニューポートは、仕事における「フロー」状態を、「認知能力を限界まで押し上げる、気が散る要素のない状態で集中して行う職業的な活動」と定義し、「ディープワーク」という独自の用語で呼んでいる。

 また、この状態を達成するための具体的な提案もしている。起業家、特に小さなスタートアップ企業のCEOには、僕が“モンクモード・モーニング”(午前中の修道士モード)と呼ぶものを実践している人が多い。

 彼らはこう言う。

「午前11時か正午までは誰とも連絡をとらないし、会議にも出ない。メールにも返信しないし、電話にも出ない」

 午前中は各自が静かに仕事に集中し、他人と関わる仕事は午後に回す、というアプローチを会社全体で採用しているケースも多い。

 アマビールも、“作業に集中する時間と人と積極的に関わりあう時間をうまく組みあわせる”という作業モデルを推奨し、仕事の成果を高めるには、「週のうちまとまった時間を予め強制的に確保し、その時間は通常の職場環境で生じる気を散らす要因から従業員を守る」ことが必要だと言う。

 あなたも、この方法を取り入れてみてはどうだろうか。たとえば、“水曜日と金曜日は、午前11時まで出社せず、家で集中して仕事をしたい”と会社に提案してみるのだ。

 広告業界の著名人で、オグルヴィワン社のディレクターを務めるロリー・サザーランドは、現代では、出社するのはメールを書くためではなく、人と会い、話をするためだと主張している。

「一昔前なら、コピーをするのにも会社に来なければならなかった。書類をつくる、プレゼンテーションの準備をする、テレックスを送信する、すべて会社の道具が必要だった。オフィスにはそこに行かなければできないさまざまな機能があった。でもいまでは、パソコンさえあれば、オフィスでできる9割の仕事は自宅でもできる。だから私たちは、“この時代、オフィスは何のためにあるのだろう。”と自問すべきなのだ」

 サザーランドは、生産的で有意義な仕事がしたいなら、コンピューターの前に座ってメールを書くためだけに出社するのは間違いで、事前に予定していた人と会ったり、その場所にいる人たちと顔をあわせて話をしたりするために会社に行くべきだと言う。

「メールを書いているときに、誰かと社内で偶然に出会ったりはしない。メールは基本的に、人間関係を広げていくためのツールではない」

 職場で幸福感と充実感を高めるための方法が、“大切な仕事をしていると実感すること”ならば、あなたも週に2回のモンクモード・モーニングを取り入れてみてはいかがだろうか。