イギリスからの翻訳書Google・YouTube・Twitterで働いた僕がまとめたワークハック大全』が本年9月に発売された。コロナ禍で働き方が見直される中で、有益なアドバイスが満載な1冊だ。著者のブルース・デイズリー氏は、Google、YouTube、Twitterなどで要職を歴任し、「メディアの中で最も才能のある人物の1人」とも称されている。本書は、ダニエル・ピンク、ジャック・ドーシーなど著名人からの絶賛もあって注目を集め、現在18ヵ国での刊行がすでに決定している世界的なベストセラー。イギリスでは、「マネジメント・ブック・オブ・ザ・イヤー 2020」の最終候補作にノミネートされるなど、内容面での評価も非常に高い。本連載では、そんな大注目の1冊のエッセンスをお伝えしていく。

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「好奇心」を重視する職場はとても少ない

 ビジネスの世界では、「事前分析」は建設的に行われる。

 それは、もうどうすることもできない過去の失敗した出来事についてあれこれと議論するのではなく、これから何が起こるかを予測し、計画を立てることだからだ。

 たとえばチームのメンバーは、翌年のプロジェクトで失敗する可能性のある事柄とその理由を書き出すことが求められる。水晶玉を覗き込むように、不安に感じていることを率直に話すことができる。

 そのことで非難されたり否定的だと思われたりすることを心配することなく、未来にいる自分をイメージして、そこで想定される困難や課題を明らかにしていく。

 一見すると単純だが、この事前分析はとても強力なツールであることがわかっている。

 ウォートン・スクールのデボラ・ミッチェルらの調査によれば、「この計画でどのような問題が想定されるか?」と尋ねただけで、結果の予測が30パーセント向上した。

 あるフォーチュン500社に含まれる企業の人物は、同社のCEOが引退すれば数十億ドル規模のサステナビリティ・プロジェクトが失敗するという予測を当てた。

 事前分析の成功のカギを握るのは好奇心だ。残念ながら、これは必需品でありながら、現代の職場では不足している。

 ハーバード・ビジネス・スクールのフランチェスカ・ジーノがさまざまな分野の従業員を対象に行った調査によれば、70パーセントの従業員が職場で質問をすることに壁を感じている。

 ジーノはその理由の一部は、効率性を重視する企業側が、社員が自分の興味の対象を追求できるようになれば社内の規律が崩れてしまうと恐れているからだと考察している。

 それでもジーノは、好奇心はとても重要だと主張している。好奇心が活発になれば、確証バイアス(間違っていることを示す証拠ではなく、自分の考えを裏づける情報を探すこと)に陥る可能性が低くなる。

 フランスの経営大学院INSEADのスペンサー・ハリソンらは、離職率の高いコールセンターの新入社員を対象にした研究で、好奇心が社員にもたらすメリットを明らかにした。

 好奇心の強い従業員は勤務を始めると、同僚から有益な情報を引き出し、顧客の問題に対処する能力が目に見えて向上していた。

 ジーノが調査した3000人のうちの92パーセントが、チーム内にいる好奇心の強いメンバーはアイデアを提供してくれると考えていたことも驚くに当たらない。

 好奇心がカルチャーとして根づいている職場はとても少なく、個人レベルでも時間の経過と共に低下することを示す証拠もある。

 新しい仕事を始めたばかりの250人を対象にしたジーノの調査では、半年間で好奇心のレベルが平均20パーセント以上低下していた。仕事が忙しすぎて、質問ができなくなっていたのだ。

 事前分析をより良いものにする探究心の旺盛なカルチャーを職場で育むには、多くの努力が必要だ。でも、それは特別に難しいことではない。ポイントは、質問が促され、質問者が報われる環境をつくることだ。

 僕が出版社のイーマップ社で働いていた頃、同社の気さくなCEOロビン・ミラーは、作業中の社員の仕事場を1人ずつ訪れ、おもむろに近くの椅子を引っ張って座り込むと、そのことに驚く様子もない社員にいまどんな仕事をしているのかを尋ねていた。

 ジーノも実験によって、「今日、好奇心を持った話題や活動はなんですか?」というごく簡潔な質問に4週間答えさせただけで、労働者が仕事で革新的な行動を起こしやすくなることを明らかにした。

 もう1つの方法は、フレーミングを用いた学習アプローチを採用することだ。問題を個人的なものではなく、グループ全体で取り組むべきものという枠組みでとらえるものだとフレーミングするのだ。

 不安や恐れを感じることなく同僚とプロジェクトについて率直な話がしたいのなら、事前分析はとても有用な方法だ。

 好奇心と質問が歓迎されるカルチャーを育てれば、それはさらに有益なものになるだろう。