世界の自動車市場の中心は
米国から中国へ

 現在起きているのは、米国から中国に、世界の自動車産業のダイナミズムが移り始めているということだ。1920年代、米国ではフォードが大量生産方式を確立し「T型フォード」を生産した。大量生産方式は、急速な供給能力の向上と経済成長をもたらし、世界のモータリゼーションを支えた。それが、大恐慌発生までの世界経済を支えた。

 それから約1世紀、中国は、EVなど新しい自動車の普及に取り組み、その上でより快適かつ便利な都市生活の実現を目指している。中国が、新しい自動車の使い方を世界に示そうとしているともいえる。今後、中国の新エネルギー車規格や環境規制が各国経済に与える影響は追加的に増すだろう。

 その一方で、中国の政策運営には課題もある。例えば、EVの普及を重視した政策によって、一部では充電スタンドの過剰供給が発生している。そのほかにも、在来分野での過剰生産能力や債務問題も軽視できない。

 そうした課題はあるものの、共産党政権による国家資本主義体制の強化と優秀な人材が、中国の急速かつ経済全体での新しい発想の実現を支えている。今のところ、株価や為替レートの推移を見ると、世界の主要投資家の心理は、債務問題や過剰生産能力などのリスクへの警戒よりも、共産党政権が経済成長力を維持するとの期待に傾いている。先行きは不確実だが、そうした期待を中国が背負っていることは重要だ。

 現状、トヨタ自動車をはじめわが国の自動車企業は、中国市場でも人気を獲得している。わが国の工作機械産業などにも追い風だ。それは、DX推進のけん引役となる企業が見当たらない、わが国経済を下支えする重要な要素だ。

 今後、わが国の自動車企業は、米中企業を上回る性能を有するEVの開発を実現させ、都市空間の一部を構成する自動車の創造を目指すことによって、世界市場での需要を獲得することが必要だ。

 コロナショックによって中国のEV化などが加速化し始めただけに、わが国の企業はこれまでにはなかった大胆な発想を取り入れ、新しい自動車を生み出し、人々の新しい生き方の創造を目指すべき時を迎えている。わが国の自動車産業も、重要な変革期に差し掛かりつつある。

(法政大学大学院教授 真壁昭夫)