成果測定器(パフォーマンスメーター)

「もうひとつ重要な『隠し絵』を教えよう。バランスシートの右側の一番下には、現金製造機の成果を表示する『パフォーマンスメーター』が隠されている。利益のことだ」

 その時、由紀は意外なことに気づいた。バランスシートをよく見ると、現金は左側に、利益は右側に表示されている。つまり、現金と利益とは別物なのだ。由紀の頭の中は混乱してきた。

「利益が出たからといって、現金が同じ額だけ増加するわけではない。君が真の経営者になるには、その違いをしっかりと理解する必要がある。詳しい話は次回に寿司屋でしよう」

 そう言って、安曇はデザートのコーヒーを美味しそうにすすった。

解説 バランスシート(Balance Sheet B/S)の構造

 B/Sは、一時点の資産と負債・純資産を左右に並べただけの表ではありません。この中には、多くの情報が隠されています。

 本文にも出てきましたが、B/Sは現金(預金も含んで現金と言います)をどこから調達して、何に使っている(運用している)かを表しています。

 B/Sの右側は、資金の調達源泉です。商売の元手となる現金を資金といい、自己資本と他人資本の2つに分けられます。

 取引先(買掛金・未払金)や金融機関(銀行借入)などから調達した資金が、他人資本です。また、会社のオーナーである株主から払い込まれた資金(資本金、資本剰余金)、会社が商売をして稼いだ資金(利益剰余金)が自己資本です。

 B/Sの左側は調達した現金の使途を表しています。現金勘定は、さまざまな源泉から調達した現金が入り交じった残高です。

 流動資産は、現金が一時的に形を変えた姿です。つまり、現金が材料→製品→売掛金と形を変えて、再びより大きな現金として戻ってくるまでの姿です(このサイクルを営業循環過程といい、次章で詳しく説明します)。

 現金がいったん固定資産(建物、機械など)に形を変えると、元の現金に戻るには長い期間(耐用年数)を要します。固定資産の購入に使われた現金は減価償却を通して耐用年数を経て回収されます。