より根源的な疑問

 さらに、もうひとつ非常に根源的な疑問がある。投資銀行は、社内でプロップ・トレーディングをしていて、顧客のヘッジファンドと同じ仕事をしている。アナリストがそんなに有能なら、なぜ、わざわざ顧客に情報を教えてしまうのだろうか?社内のプロップ・トレーディングで自分で儲ければいいのではないか?

 また、大物アナリストがレーティングを変更すると、通常は株価が大きく動く。だから、アナリストがレポートを発表する前に、投資銀行のプロップ・トレーダーが先にポジションを取ってしまえば、ぼろ儲けできることになる。これをリサーチ・フロントランニングといい、大手投資銀行ではコンプライアンス部が必ず禁止している行為だ。しかし金融業界では、一部の投資銀行がこのような不正行為を行なっているという噂が絶えない。

 ところでアナリストの評価はどうやって決まるかというと、Institutional Investorsや日本経済新聞社などが、機関投資家に毎年アンケートを取っていて、セクターごとにアナリストをランキングしている。そこで自動車セクターだと、1位から20位ぐらいまで順番がつく。自動車セクターのシニア・アナリストは各証券会社に基本的に1人しかいなくて、各々が会社を背負っているのだ。そして1位だと億にとどくぐらいの年収で、2位、3位だと数千万円ぐらいだった。そして、5位以下だと基本的にクビになるという仕組みだ。
最近は不景気でもっと給料が安くなっているだろう。

 <第4回は明日27日に公開予定です。>


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