結婚マネジメント(3)
「結婚は共同経営である」

 結婚とは、他人同士が戸籍上一緒になるという契約にすぎません。だからこそ、子育てや幸せな家庭をつくるという「事業」の発想が必要です。これは、後悔している人もうまくいっている人も含めた1万人インタビューから、私が強く学んだことです。

 そもそも「嫌なら別れる」という発想では経営などできませんし、プロジェクトのマネジメントも不可能です。結婚生活においても、事業同様にお互いが歩み寄り、家庭をつぶすことなく、収支も考えながら、お互いが抱えたゴールに向かって着実に舵取りをしていく必要があるのです。

 どちらかに過度に負担があると、すぐに経営破たんしてしまうのは想像に難くありません。経営などというと味気なく聞こえるかもしれませんが、「愛情だけではうまくいかない」という先人たちの後悔は、単に好き嫌いでは家庭を経営できないことを如実に表しています。

 事業においても、大小さまざまな問題が日々起こりますが、そのたびにステークホルダー(利害関係者)間で調整して、問題を解決していきながら事業を前に進めています。その無限のベクトル合わせを止めたとき、取引先が他社製品を選ぶ、債権者が支援を取りやめる、従業員が去ってしまう、などによって事業が破たんします。

 これは結婚でもまったく一緒です。成り行きではできないのがわかっているのに、多くの夫婦はビジョンも計画も持たず「経営」されています。

 また、ワンマン経営ならまだしも、「共同経営」というのも難しいところでしょう。家事や育児の分担を巡ってぶつかり始めたときに、どちらかが一方的に言い分を通そうとすると、相手には「言いくるめられた感」が増幅し、憎悪に変質してしまうものです。

 ここはお互い歩み寄って、どちらかが喜んで自発的に動いたり、相手のモチベーションを高められる仕組みもつくっていかないと、なかなか効果も出ないものです。時には息抜きやボーナスも必要でしょうし、がむしゃらに困難に立ち向かうときも出てきます。

 男には男の、女には女の役割があるとはいえ、共働きが前提の時代、どちらかに無理やり「庶務」を押し付けることもできません。あくまで共同経営なのです。だからこそ、夫婦で家庭という事業を「経営」していく発想が必要になるのです。

 結婚生活は「目標」「計画」「マネジメント」だと考えるとわかりやすいでしょう。感情だけに頼らず、お互いの夢を自分たちの言葉で伝え合い、すり合せをしながら計画を立て、それをきちんとマネジメントしていけば、地雷を踏むリスクを最小限にすることも可能です。

 根っこにある、限られた時間を管理する力、イベントを考える企画力、感情や意思を言葉で伝えるコミュニケーション力、お互いのベクトルを調整するマネジメント力を用いて、結婚というプロジェクトを成功させようという発想こそが必要なのです。

 どうやら、家庭は放っておいて育つものではないようです。自らコミットして最高のものにつくり上げなければならないのです。そういう困難を乗り越えた人が、結婚を機に人生にレバレッジをかけられるのです。結婚とは、家庭を経営するための「人生最大のプロジェクト」だと言えるでしょう。