経常利益と経常利益率とは

カノン トヨタと日産では、営業力にちがいがあるのですね。

林教授 そうだね。営業利益が本業の利益を表すのに対して、営業利益に本業以外の財務活動で生じた営業外収益と営業外費用を増減した利益が経常利益だ。そして経常利益を売上高で割った値が経常利益率。会社が正常な状態で利益を稼ぐ力、つまり「経常的な収益力」を表している。

経常利益=営業利益+営業外収益ー営業外費用
経常利益率=経常利益÷売上高×100

カノン 経常的ということは、特別ではないということですね。

林教授 そういうことだ。突発的な損益は特別損益に載せることになっている。君に聞きたいことは、なぜ営業利益と経常利益を分けているのか、その理由だ。

カノン その前に、営業外収益と営業外費用には具体的にどのようなものがあるのでしょうか?

林教授 営業外収益は預金の受取利息、株式の売却益だね。それから営業外費用は借入金や社債の支払利息、株式の売却損などだ。つまり財務活動から生じた損益だ。会社は本業を支えるために財務活動を経常的に行っているんだよ。お金が途切れたら商売も止まってしまうからね。

カノン そうか。お金に余裕がある会社は株式で運用して利益を稼ぐでしょうし、余裕がなければ銀行から借金するってことですね。

林教授 それだけじゃない。借金を増やせば事業規模を拡大できる。利息を支払っても十分な経常利益を出していれば、借金が商売に貢献したと言える。逆に、支払利息が多く経常利益がマイナスの会社は、借金で調達したお金が十分な営業利益を生んでいない。

カノン すごい、損益計算書からそんなことまでわかるんですね。

林教授 その通り。いい借金と悪い借金があるんだよ。

カノン 私、借金ってすべて悪だと思っていました。

林教授 素人の経営者はそう考えがちだ。この点については貸借対照表で詳しく説明しよう。

林 總(はやし・あつむ)
公認会計士、税理士
明治大学専門職大学院 会計専門職研究科 特任教授
LEC会計大学院 客員教授
1974年中央大学商学部会計学科卒。同年公認会計士二次試験合格。外資系会計事務所、大手監査法人を経て1987年独立。以後、30年以上にわたり、国内外200社以上の企業に対して、管理会計システムの設計導入コンサルティング等を実施。2006年、LEC会計大学院 教授。2015年明治大学専門職大学院 会計専門職研究科 特任教授に就任。著書に、『餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?』『美容院と1000円カットでは、どちらが儲かるか?』『コハダは大トロより、なぜ儲かるのか?』『新版わかる! 管理会計』(以上、ダイヤモンド社)、『ドラッカーと会計の話をしよう』(KADOKAWA/中経出版)、『ドラッカーと生産性の話をしよう』(KADOKAWA)、『正しい家計管理』(WAVE出版)などがある。