『「雑草」という戦略』『「雑草」という戦略 -予測不能な時代をどう生き抜くか』 稲垣 栄洋 著 日本実業出版社 1500円(税別)

 上原投手は、雑草にしては「強かった」のだ。「雑草は強い」というイメージを持つ人も多いかもしれないが、実際には「弱い」のである。「弱い」からこそ、強い繁殖力を持つに至った――そんな雑草の性質を、本書『「雑草」という戦略』から学ぶことができる。

 本書は、弱者としての合理的な方法によって、競争を避けて確実に子孫を残す「雑草」の生き残り戦略を、ビジネスにも応用できるように紹介している。著者の稲垣栄洋氏は、静岡大学大学院農学研究科教授。雑草生態学を専門とし、植物の生態に関する多くの著書がある。

 道ばた、空き地、公園など、雑草はいたるところに、いつの間にか生えている。そして、そうした「本来は植物がある場所ではないところ」に生えるがゆえに、常に踏まれたり、刈られたり、むしられたりするリスクを負う。いつ、そうした危害を加えられるか予測できない、きわめて不確実で過酷な環境にあるのが、雑草なのである。

 現代は、先行き不透明な、不確実で不安に満ちた時代といわれて久しい。新型コロナウイルスの流行が、そうした状況に拍車をかけている。

 踏まれる、刈られる、むしられるといった「予測不能な激しい変化」が起きる場所に、たくましく生える雑草。その生存戦略は、同様な環境に置かれた私たちのビジネスや生活に、大いに参考になるのではないだろうか。

“踏まれるスペシャリスト”
として生きるオオバコ

 著者によると、植物の世界は、私たちのビジネスの世界よりも、はるかに厳しい競争社会だ。安定した環境であれば、もっとも強い者だけが生き残る。「ナンバー1」しか生存できず、競争に敗れたナンバー2以下は淘汰されるのだという。

 植物の「強さ」とは、より大きく、高く育つことだ。他の植物よりも高い位置にあれば日光を独占でき、光合成をしやすくなる。しかし、低い植物は日陰になり、光合成ができずに枯れる運命にある。

 では、「弱い植物」はどうすればいいのか。「自分が得意な環境」を選んで生えればいいのだ。著者はそれを「ナンバー1になれるオンリー1の場所」と呼んでいる。

 大きくもなく、高く伸びることもない雑草は、典型的な「弱い植物」だ。それゆえ、ほかの植物にとっては不利になる環境を選んで生えている。強い植物は、あえて生存に不利な場所を選ばないので、そこで生き残れる雑草は「ナンバー1でオンリー1」になれるわけだ。