中国最大のネットセールである「独身の日」が開催された。中国EC最大手アリババグループの流通額は7兆円を超えるなど華やかな数字が躍ったが、その裏では日本企業を含むメーカーの過酷な投資ゲームが繰り広げられている。(ダイヤモンド編集部特任アナリスト 高口康太)
7兆円超えの巨大セール
コロナで急加速
2020年11月11日、中国最大のネットセール「独身の日(ダブルイレブン)」が行われた。EC(電子商取引)最大手アリババグループのGMV(総流通額)は4982億元(約7兆9200億円)を記録した。多くの日本企業がこのビッグイベントに挑んでいるが、利益を上げられる企業はごく一部に限られているようだ。
昨年の「独身の日」にはアリババグループのGMVは2684億元(約4兆2700億円)で、「たった1日の売り上げで楽天の年間GMV(約4兆円)を超えた」と話題になった。ただし、成長率は2017年の39%、2018年の27%、2019年の26%と鈍化傾向にあった。これほどの巨大イベントになった以上、いつまでも右肩上がりの成長が続かないのは道理だと指摘されていたが、なんと今年は一転して86%もの高成長となった。
販売期間を増やしたこと(11月11日以外にも11月1日から3日も販売期間とされた)、映画チケットの販売や生鮮スーパーなど新たな販売領域が拡充されたことなど、昨年よりも集計範囲が広がったこともあるが、アリババグループの蒋凡(ジャン・ファン)淘宝Tモール総裁は同一の集計範囲で計算しても、GMVは1032億元(約1兆6400億円)増で、成長率は過去3年で最高だったと話している。
成長率が再加速した背景として、見逃せないのがコロナの影響だ。新型コロナウイルスの抑え込みに成功し、他国に先駆けて経済成長率を回復させている中国だが、個人消費の回復は遅れ気味だ。
百貨店やスーパー、ECの売上高を合計した社会消費品小売総額は、今年1~9月の累計で前年同期比マイナス7.2%と低迷している。その中で急成長を示すのがECで、実物商品のネット販売に限ると、1~9月で前年同期比15.3%の成長を示している。中国はEC化率(小売りに占めるECの比率)が20%を超えており、規模の面だけではなく、利用率の面でも世界一のEC大国と言われてきた。この傾向がコロナによってさらに加速している。旅行などの消費が低迷して浮いた家計資金も含め、さらにECへの集中度が高まっている。