この台風の影響で、同地を走る箱根登山鉄道も、橋梁の流出や土砂流入などによって非常に大きな被害を受けた。その様子はテレビニュースなどで数多く報道されたので、記憶に残っている方も多いと思う。

 当初は復旧まで、1年ほどの工期がかかると言われてきたが、復旧工事にあたり、国・県などの行政、地権者、箱根登山鉄道の各者が復旧への熱意をもって協力した結果、当初よりもかなり早い、本年7月23日に運転を再開することができた。

 本来であれば、夏休みを前にした運転再開で、当然、多くの観光客や湯治客を見込めたはずだ。しかしご承知の通り、世間は新型コロナの渦中だったために、いささか寂しい運転再開日となった。

 とは言え、そこは「天下の険」を行き来する有名観光鉄道の1つだ。先日筆者が訪れた際は、政府が始めた「Go Toキャンペーン」とも相まって、日中であれば「シート満員+α」という穏やかな混雑状態であった。また、同キャンペーンの東京発着が解禁されたので、さらなる集客も見込めるであろう。

かつては小田急車両も並走
三線軌条だった箱根登山鉄道

車窓から見えるのどかな風景に心を癒されるまだ作業が続く工事風景。山肌には擁壁が築かれ、軌道もしっかり敷かれている。車窓にはのどかな風景が戻り、心癒される Photo by S.W.

 ここからは、箱根登山鉄道線を簡単に紹介してみたいと思う。同線は、小田原から箱根湯本を経て、強羅に至る全線15キロメートルの単線鉄道だ。全長15メートルほどの車両を2両ないし3両の編成にして運行されているが、実際の運転形態は小田原・箱根湯本間と箱根湯本・強羅間に別れている。

 これは、箱根登山鉄道の軌間(線路の幅1435ミリ)と小田急の軌間(同1067ミリ)に相違があるためで、物理上走れないからである。

 もっとも、以前は小田原・箱根湯本間の線路は三線軌条といって、1本の線路は共通とし、山側の線路をそれぞれ1067ミリと1435ミリの地点に敷き、箱根登山車も小田急車も走行できるようになっていた。

 しかし、保守上の問題やバリアフリーの関係から、2006(平成18)年には、小田原・箱根湯本間の軌間を1067ミリだけとし、全列車とも小田急電鉄の全長20メートル級の車両を赤くラッピングし、箱根登山車のイメージに仕立てた4両編成の電車で運転されている(他にも、小田原から箱根湯本間は小田急の乗り入れ車両で運行されているため、新宿や北千住からのロマンスカーを見ることもできる)。