自社のもうけの仕組みが
分かるページがあるか

 具体的にダメなHPの例を挙げて説明しましょう。本連載の3回目で、学生に、企業を知る3つのステージがあり、その第1ステージは「企業のもうけの仕組みを知る」ことだと説明しました。

 とある企業のトップページに「サステナブルな未来を切り開くため、グローバルなステークホルダーの皆様と共に歩みながら、イノベーショナルなビジョンを提供します」といった抽象的な文言が並んでいたとしましょう。これではその企業が何をしているのか、全く分かりません。

 世界や国内でシェアトップの知名度が高い企業、大手の有名企業や老舗企業なら特にHPで説明しなくても、何をしている企業であるのかが広く学生にも知られています。しかし、多くの企業はそうではありません。

 例えば「ハッピードリームカンパニー(仮称)」という名前の企業があったとします。学生が、同級生や家族に「ハッピードリームカンパニーを受けようと思う」と言ったとしたら、「それって何の会社?」と必ず聞かれることでしょう。もし学生が、即座にその会社がどのような事業をしているのかをはっきりとは答えられず、「なんか、グローバルのステークホルダーに希望を……」と抽象的なことを口走って、自分でも企業のことがよく分からずに、そのまま黙ってしまったら、周囲は心配になってきっとHPを検索するでしょう。

 さらに、HPを開いても、分かりやすいところに企業の事業内容の説明がなく、白い背景に、キラキラした陽光のふりそそぐイメージ動画が流れて、蝶や花びらが飛んでいたりでもしたら、やはり怪しい企業なんじゃないか?というふうに印象づけられてしまいます。学生の友人や家族は、「そんな何をしているのかよく分からない企業はやめておいた方がいいんじゃない?」と言うでしょう。学生は無意識にその否定的な空気を取り込んでしまい、たとえハッピードリームカンパニーが、学生本人が希望する業容で、仮に途上国のインフラ整備を手掛ける堅実な会社だったとしても、志望先から外してしまうということもあり得るのです。

 私は、採用のコンサルティングをしている取引先の企業の方には、いつも「採用の最大の敵は”空気”」と言っています。採りたい学生の周囲がその企業のことを知っているかどうか、知らない場合に検索して、すぐにその企業がどんなことをしているのか分かるようでなければ、「なんとなく良くない空気」が生じ、学生の中でその企業の評価は内実と関係なく下がってしまうのです。これが空気の恐ろしさです。

 企業の採用担当者は、ぜひ自社のHPを見て、自社のことを全く知らない人が見ても、もうけの仕組みが何かを簡潔に言葉にできるように分かりやすくまとめられているか、いま一度点検してほしいのです。もしそうでないなら、今すぐに、どんな人にどんなものを売ってもうけているのかを理解してもらうHPを用意してください。HPに学生がたどり着いたときに、事業内容を理解できるようにしておくことが広報の第一歩です。それができていない企業には学生は行きたいと思いませんし、どんなに業績が良く、事業内容が優れていて、本当は学生がやりたいと思っている仕事ができる会社でも、学生は興味を持つきっかけを持てず、企業は優秀な学生を逃してしまうことになるのです。学生にとっても優良企業を知るチャンスがなくなるわけですから、誰にとってもいいことはありません。