商売の基本は現金売買

カノン 借入金は分かるとして、仕入先(買掛金)って書かれていますけど、買掛金ってなんのことですか?

林教授 商品の仕入代金の未払いのことだ。商売をする場合、仕入の都度いちいち代金を振り込んでいたら手間ばかりかかってしまうよね。そこで、1ヵ月後とか2ヵ月後にまとめて仕入代金を支払うんだ。例えば、3ヵ月分の仕入代金100万円を4月末に支払うとする。この100万円が貸借対照表の買掛金に載ってくるわけだ。

カノン ちょっと待ってください。買掛金って、翌月お金がでていくのですよね。それでもお金の調達なんですか?

林教授 いい点に気づいたね。まず押さえておかなくてはならないのは、商売の基本は現金売買だということだ。つまり業者から商品を受け取ると同時に、仕入代金を支払う。このような商売をキャッシュ・オン・デリバリーという。

カノン 初めて聞きました。そんな商売の仕方ってあるのですか?

林教授 君が気づいていないだけだよ。スーパーも外食もホテルに泊まっても現金かクレジットカードで支払うよね。アマゾンや楽天市場などの通販もクレジットカードを使う。これらはすべてキャッシュ・オン・デリバリーだ。

カノン 確かにそうですね。ではうちの会社でもそうですけど、なぜ商品を受け取ったあとに仕入代金をまとめて支払うのですか。

林教授 お互いに相手先を信用しているからだよ。つまり、商品を引き渡せば、約束通りに代金を口座に振り込んでくれる、と信じているからだ。

カノン でも、お金があればすぐに支払えばいいと思いますけど。

林教授 さっき言ったようにいつも手元にお金があるわけではないし、あったとしてもその都度支払っていては商売が滞ってしまう。信用を前提とした取引でないと商売は大きくならないんだ。

カノン その信用を前提とした取引ってなんでしょうか。

林教授 掛による取引だ。まずは掛で仕入れて、代金はあとでまとめて支払う。

カノン キャッシュ・オン・デリバリーが原則だとすると、信用を前提とした掛取引はどのように考えればいいのでしょうか。

林教授 商品を受け取ると同時に仕入先からお金を借り、その借りたお金で仕入代金を支払う。

カノン 会社は業者からの借入金で仕入代金を支払うのですか。たしかに、キャッシュ・オン・デリバリーですね。

林教授 だが仕入業者からの借金は残ったままだ。この借金が買掛金なんだよ。つまり、買掛金は仕入業者からの借入金のことであり、それは資金の調達なのだ。

商品を受け取る→同時に仕入先から代金相当分のお金を借りて、そのお金で仕入代金を支払う→翌月、借入金を返済する

カノン なんだか煙(けむ)に巻かれたようです。

林教授 理解が追いつかなければ、とりあえずはそういうものだとして覚えておきなさい。

カノン またお願いします。