発達障害のひとつであるADHD(注意欠陥・多動症)の当事者である借金玉さん。早稲田大学卒業後、大手金融機関に勤務するものの仕事がまったくできずに退職。その後、“一発逆転”を狙って起業するも失敗して多額の借金を抱え、1ヵ月家から出られない「うつの底」に沈んだ経験をもっています。
近著『発達障害サバイバルガイド──「あたりまえ」がやれない僕らがどうにか生きていくコツ47』では、借金玉さんが幾多の失敗から手に入れた「食っていくための生活術」が紹介されています。
働かなくても生活することはできますが、生活せずに働くことはできません。仕事第一の人にとって見逃されがちですが、生活術は、仕事をするうえでのとても重要な「土台」なのです。
この連載では、本書から「在宅ワーク」「休息法」「お金の使い方」「食事」「うつとの向き合い方」まで「ラクになった!」「自分の悩みが解像度高く言語化された!」と話題のライフハックと、その背景にある思想に迫ります(イラスト:伊藤ハムスター)。

発達障害の僕が発見した「台所がいつもきれいな人」と「頑張っても頑張っても片づかない人」の致命的な差

今ある皿を全部捨てて、白か黒の四角い皿を買え

 あなたの台所のお皿の収納を見てみてください。狭いスペースにさまざまな形の皿が無理やり詰め込まれているし、全部は収納に入りきらない。そんな人も多いのではないかと思います。あなたの食器棚で恒常的に起きているあの「皿テトリス」は、もう終わりにしましょう。

 まず、今ある皿は全部捨ててしまいましょう。購入するべきは、理想をいえばシンプルな白か黒のスクエアの皿です。これを大と小の2種類3枚ずつも持てば、二人暮らしの皿需要は十分に満たします。四角い皿をおすすめする理由は、丸よりもスペースに収まりがよいからです。茶碗とお椀も大きさを揃えて積み重ねることが可能なもの、可能であれば大きさを揃えてスタックできるように必要不可欠なものを購入するのが理想です。

 とにかく種類を増やしすぎない、形を統一することが重要です。

食洗機のサイズから「何を買うか」を考える

 このライフハックが真の価値を発揮するのは、食洗機と組み合わせたときです。皿のサイズが揃っていれば、食洗機で一度に洗える枚数は最大化します。ファストフードのお店で大量の同じ形をした皿がものすごい効率で洗われているのを見たことがある人も多いでしょう。あの便利さを自宅に取り込んだとき、台所は本当に使いやすくなります。これは、狂気のような狭いスペースで料理をつくって提供する飲食店の知恵ですので、狭いキッチンほど効果を発揮します。

 もし、あなたが便利なキッチンを手に入れたいと考えるならば、まずやるべきは食洗機を購入し、サイズを把握することです。そして、それに合わせて皿や道具を購入していけば、最高の効率でキッチンを使うことができます。

 このお話はひとつのハックであると同時に、もうひとつ極めて重要な概念を含んでいます。それは、何かを便利にしようと思ったら「根底からつくり替える」のが多くの場合一番手っ取り早いということです。

 人は、「毎日なんとか頑張って皿テトリスをクリアした状態」を問題の解決と認識してしまうところがあります。しかし、それはただ単に問題が見えなくなっただけです。形のそろわない皿をテトリスみたいに食器棚に詰め込んでも、それは問題を一度見えなくしただけで苦しみはまた襲ってきます。皿テトリスをしなくていい状況こそが問題の解決だということを、ぜひ覚えておいてください。これは、キッチンの話だけではなくあらゆる場所に応用できる考え方です。

 あなたの生活はあなたが変えられますし、あなたの人生はあなたが変えられます。その手ごたえをあなたが手に入れるささやかな手助けになれば、それは僕にとって本当に幸せなことです。