ものづくりが東アジア全域(東南アジアも含む)に広がると、分業構造もアジア全域で考えざるをえない。日本の素材や部品や製造機械も、アジアの分業のなかに組み込まれることになるのだ。

アジア地域内における
経済の深化と分業の広がり

 経済活動において距離の重要性を強調するのがグラビティ・モデルの考え方だ。地球全体で分業が進むというよりは、地域経済のなかで分業が広がっていくとする。

 グローバル化の流れのなかで、一国内ではいろいろな経済活動は収まりきらない。とはいえ、地球全体では規模が大きすぎる。そこで、地域での経済の広がりと深化が起きるのだ。これは北米でも、欧州でも、そして東アジアでも起きている。特に東アジアは急速に成長を続けているので、この地域内での動きが活発になる。

 企業としても、この経済活動の広がりと深化を無視することはできない。自動車や家電のような産業は、日本国内にとどまっていては、グローバル競争に勝つことはできない。いまは遅れを取り戻すべく、必死になってアジアへの展開を進めている。

 日本のものづくりを支えてきた素材、部品、製造機械などの中間材や資本財メーカーも、その販路をアジア全域に広げている。その生産基地も、必要に応じてアジアに展開せざるをえない。もはや日本国内に経済活動を限定する必要はないのだ。

 こうした動きを日本国内のものづくりの空洞化ととらえる必要はない。東アジア全体の生産が拡大すれば、それによって日本国内での付加価値にも貢献する。これは前回、中国での自動車生産やインドでのオートバイ生産の例で説明したとおりである。アジア全体が世界の生産基地として拡大することが、他の国には生産できない中間材や資本財を生産できる日本にとっては、チャンスになるのだ。