もっとも、数日間、日本に滞在したら、次第に状況を理解できるようになる。日本は65歳以上の高齢者はすでに人口の約3割を占めているという、この驚異的な数字をリアルに経験するからだ。

 来日した中国人らは「確かに、お年寄りが働かないと働き手がないよなー」と納得するものの、同時に「それにしても、こんな年齢まで働くなんて。いつ老後を楽しみ、ゆっくりするのかなあ」と気の毒に感じ、「かわいそう」と思ってしまうのである。

ノジマの「80歳まで雇用」は衝撃
中国では老後はのんびり暮らすもの

 日本人は、中国人らのこうした見方に違和感を覚える人も多いであろう。というのも、総じて多くの日本人は働くことを好み、むしろ「元気なうちは、バリバリ働きたい」という人が少なくないからだ。

 そもそも中国は昔から、年をとれば子孫が周りにたくさんいて、家族と和気あいあい、のんびり暮らすのが幸せとされる。逆に、年をとってからも働き続ける人は、「生活が楽ではない」「苦労している」というイメージがあり、他人からは冷笑される対象なのである。

 日本とはかなり「働く」ことに対するイメージが異なるのだ。

 ゆえに今年7月の、日本の家電量販店ノジマが導入するという「定年後、最長80歳まで雇用を延長する制度」のニュースは、たちまち中国でも報道され、多くの中国人に衝撃を与えた。

 その代表的な反応が「80歳まで働く?われわれの平均寿命を超えている!」というものだ。

 現在、中国の法定退職年齢は一般的に、男性が60歳、女性が55歳(※筆者注:体力勝負の職種では、男性55歳、女性50歳。公務員国家幹部の場合、異なる基準がある。特別高級人材の場合は例外もある)。現行の法定基準は新中国が建国してまもなくの1951年に定められた。そのときの平均寿命は50歳ぐらいだった。2000年の国勢調査では平均寿命が71.4歳となり、2019年の政府の最新発表では77.3歳となった。

 つまり、約70年の間に、国民の平均寿命が20歳以上も延びたのに、時が止まったかのように、法定の退職年齢は一度も変わらなかったことになる。ちなみに、本当にそうなのかは不明だが、中国では「現在、中国の退職年齢は世界中(一部アフリカの国を除く)で一番若い」といわれている。