2018年6月の就任以降、大ナタを振るい大胆な改革を進めてきた澤田純・NTT社長。社内に戦略チームを持つことなく、大きな意思決定を独断で行っている澤田社長はさながら独裁者である。剛腕経営者は、いかにしてNTTや国内ICT産業の沽券を取り戻そうとしているのか。特集『デジタル貧国の覇者 NTT』(全18回)の#3では、NTT復権の要諦と「GAFA対抗軸」を意識した将来戦略について聞いた。(ダイヤモンド編集部副編集長 浅島亮子)
「大胆さ」と「繊細さ」が同居
稀代の独裁経営者の素顔とは
従業員32万人を擁する巨大組織の頂点に立つ独裁経営者――。澤田純・NTT社長は、2018年6月の就任以来、間髪を入れずに大胆な施策を矢継ぎ早に連打してきた。海外事業の再編、不動産事業や電気事業などの立ち上げ、NTTによるNTTドコモの完全子会社化、そして、今回の異次元の携帯料金の値下げがそうだ。
澤田社長になって、一気にNTTグループが一丸となった“グループ再結集”の動きが加速している。歴代経営者がなし得なかった「大NTT」復権の成否が、澤田社長の手に委ねられているのだ。
稀代の独裁経営者の素顔とはどんなものなのか。NTT幹部に、澤田社長の“人となり”や経営手法についてたずねると「とにかくせっかちである」という答えが返ってくる。
澤田社長の懐刀である井伊基之・NTTドコモ社長によれば「即断即決。とにかく意思決定が速い。彼はビジョナリー、将来を先読みしてビジョンを考える人。そして、ビジョンを描いて終わりではなくて、課題の進捗を逐一チェックまでしている」という。
栗山浩樹・NTTコミュニケーションズ(コム)副社長の澤田評はこうだ。「澤田さんのリーダーシップの原点はコム時代にある。NTTグループほどにはしがらみやレガシーのないコムで、通信と情報システムという二大事業と新規事業を経験しており、(組織やプロセスといった)実務面でどう動かせばビジョンを実現できるのかという経験値もある」。
また「経営者はせっかちじゃないと何も変えられない。『俺の言っていることは響いているか?』と常に周囲に確認し続けられるだけの強靱な精神力が澤田さんにはある」と続ける。
ビジョナリーであり実務家――。経営幹部らの発言からは、ビジョンを描く「大胆さ」と、それを達成するために緻密なアプローチ法を設ける「繊細さ」が同居した経営者像が浮かび上がる。
では澤田社長は、従業員32万人の巨大組織をいかにして機動的に動かそうとしているのか。
その最大の秘密は「人事」にある。