果たしてSiriに性別はいるのか

「ヘイ、Siri!」「OK、グーグル!」――。今では各世帯に少しずつ普及している音声AIアシスタント。この声のかけ方にも、一考の余地があるのかもしれない。

 近年、AIアシスタントによるジェンダーバイアス(男女の役割や男らしさ・女らしさに関する固定的な観念)の強化を問題視する声も上がっている。

 UNESCOが19年に発表した報告書では、多くのAIアシスタントで女性の声が初期設定とされていることが指摘された。

「女性は世話好きで従順で(中略)『ヘイ』や『OK』とぶっきらぼうに命令するだけで利用できる存在だ、というシグナルを送っている」との問題提起だ。

 同報告書は加えて、Siriの例のように、女性の声を持つAIアシスタントがセクハラ発言に従順な反応を示すようにプログラムされがちなことにも言及。「『女性は従属的であり、粗末な扱いを受けることにも寛容である』という一般的なジェンダーバイアスを補強している」と、現状のAIアシスタントのあり方を強く批判している。

 日本国内でも、20年3月に開業した高輪ゲートウェイ駅に設置された「AI駅員」について、同様の議論が巻き起こった。女性のAI駅員キャラクター「さくらさん」が、恋人の有無やスリーサイズといったセクハラ要素の強い質問にも拒否反応を示さず、優しく受け流すことが判明し、非難の声が集まった。

 本来、性別を持たないはずのAIに性別を付与する行為には、どうしても開発側の無意識下のバイアスが反映されやすい。そのため、ユーザー側の受け止め方にも必然的にバイアスがかかってしまう。結果として、現実世界におけるジェンダーバイアスを温存、もしくは助長してしまう恐れがあるのだ。

 今後、AIアシスタントやチャットボットの自社開発を検討している企業は、「性別の特定できないAI」を志向することも一案だろう。

 UNESCOの報告書内では、中国アリババグループの音声アシスタントAliGenieが「男女どちらとも判断できない、漫画のような声で話す」好例として取り上げられている。また、米国に本部を置くクリエイティブエージェンシーのVirtueは、北欧最大規模のLGBTQ(性的少数者)の祭典であるデンマーク・コペンハーゲンのプライドと共同で、男声にも女声にもとれない中性的なデジタル音声「Q」を20年に開発したという。