オキシトシン研究の専門家、福島県立医科大学病態制御薬理医学講座の前島裕子特任教授は、大学院で学位(PhD)を取得し、神経内分泌分野で研究を始めると、たちまちオキシトシンの多彩な可能性に魅了された。

「オキシトシンは、『愛情ホルモン』としての側面ばかりが脚光を浴び過ぎている。その真価はもっと多様で奥深い。オキシトシンの謎を解明したい」

 昼夜を惜しみ、休むことなく研究に没頭する。ステイ・ホームならぬステイ・ラボの日々。前島特任教授の直感は当たった。

 抗ストレス、家庭コミュニケーションの改善、臓器へのストレス軽減、不安の軽減、自閉症の改善、薬物・アルコール依存の改善、リラクゼーション効果、臓器(肝臓・すい臓など)へのストレス軽減、疼痛緩和、食欲抑制/肥満解消など、心身に縦横無尽に働くオキシトシンの多彩な効用が、世界中で続々と報告され始めた。

マッサージが気持ちいいのは
オキシトシンのおかげ

 2000年以降20年のオキシトシン関連論文数は、2000年以前20年の約2倍。このことからも近年、研究者の間でも関心が高まっていることが分かる。前島チームも奮闘中だ。生活習慣病やエネルギー代謝領域で最高峰の米国学術誌「Cell Metabolism」(インパクトファクター15.950)などで、数多くの英文論文を発表し続け、世界中で注目されている。

 オキシトシンは「抗ストレスホルモン」として、ストレス反応の軽減や、痛みを緩和する効果もある。マッサージが「気持ちいい」と感じるのは、体へのコンタクトでオキシトシンの分泌が増加する一方、ストレス関連ホルモン(ACTH)の分泌が低下するためだ。

 前島特任教授は最新刊『最強の医師団が教える長生きできる方法』(アスコム)でも、「リンパマッサージの効果は科学的に立証されている。自律神経を整える、不安やストレスの軽減、腸の動きの改善など、さまざまな効果が報告されている。ヒトの手(体温と柔らかい感触)で施術するというところも大きなメリット」「静かな癒やし系の音楽は、交感神経を静め、副交感神経を活性化させる、ヒーリング効果がある」と述べている。

 ここでもオキシトシンが関与していそうである。