2週間以上続く疲労感は危険なシグナル?

 トップアスリートは周囲からの勝利への期待、記録への挑戦、結果を要求されるなど多くのストレスにさらされています。どうしても無理をしてしまいがちです。完全どころか、120%、200%を目指して、過剰練習、いわゆる「オーバートレーニング症候群」になってしまうことがあります。

 オーバートレーニング症候群とは、高強度のトレーニングを長期間にわたって続けた場合に出現する、パフォーマンスの低下のことをいいます。通常の疲労は、過度な休息ですぐに回復します。

 ところが、2週間以上休息しても回復しない状態が見られることがあります。これをオーバートレーニング症候群といいます。症状は多彩で、全身倦怠感や不眠、食欲不振や過食など食欲の変化、イライラ感、集中力低下、うつ気分などです。

  Kさんは、一部上場企業のフレッシュマンです。大学時代は、駅伝の選手として活躍していました。この会社は社会人陸上チームを持っていたので、Kさんはいわば選手として期待されていたのですが、当然社会人としての仕事も覚えなければなりませんでした。
  トレーニングさえしていればよかった大学時代とは違い、仕事もハードなうえ、Kさんの不得意な分野でした。しかし生真面目なKさんは、毎朝トレーニングを欠かしませんでした。Kさんの心身に異常が生じたのは、入社3カ月を過ぎた頃からでした。
  慢性的な疲労を感じるようになり、徐々に競技成績が低下してきました。半年後には強い吐き気とだるさから練習についていけなくなり、食欲低下、不眠、気分の落ち込みも現れ、遅刻や欠勤など本業にも支障を生じるようになってきました。練習量を減らせば回復すると思っていたのですが、なかなか回復せず、不調を自覚してから約9カ月後に病院を受診することになりました。精査の結果、オーバートレーニング症候群と診断されました。