とくに印象深いのは、民事再生法の適用を申請した東証1部上場のアーバンコーポレイションです。直前の決算で売上高2436億円、経常利益616億円という過去最高益を計上していたにもかかわらず、黒字倒産してしまったのです。

 東京商工リサーチによれば、倒産企業のうち当期純損失を計上していた企業の割合は約半分程度で、残りの半分の企業は黒字倒産だということです。つまり、損益計算書で売り上げと利益だけを見ている経営者が多く、キャッシュフロー(出ていくお金と入ってくるお金の流れ)のタイムラグを把握していないことが倒産の原因です。

 会社の勢いを過信して、キャッシュ不足になることを予測できないままに仕入れや投資を拡大している経営者がいかに多いかということでしょう。

 黒字倒産は、トータルでは利益が出ているのですから、キャッシュフローの管理をきちんとして無理な急拡大さえしなければ、簡単に回避できるものです。

 家計もそうですが、貯金がないと、万が一、一家の大黒柱が災害にあったり病気になったりした場合、即、生活費に困窮してしまいます。ですから、どこの家庭も一生懸命に貯金をしているわけです。企業経営者も儲かっているときに稼いだ利益を将来に備えて積み上げておかないと、簡単に倒産してしまいます。

 かつて私が勤めていた再開発のコンサルタント会社は、「入ってくるコンサルタント料=粗利というほぼ100パーセント粗利のような会社でしたが、倒産してしまいました。各地域の市街地再開発組合との随意契約でしたので、全国でやっている事業さえ順調に進捗していれば、なんの問題もない会社です。

 成功者によくある話ですが、社長はバブル全盛期で事業が絶好調ということもあって、当時、お抱え運転手を雇ってロールスロイスで夜な夜な大阪から銀座まで飲みに行っていました。新築した家は大豪邸で、大きな石を配置し、広大な庭には滝が流れていて錦鯉がたくさん泳いでいました。

 全国10ヵ所以上で大きな再開発事業を抱えていたので、事業さえ進めば、将来の入金予定は確実でした。儲かっていて、しかも勢いのある会社が突然パタッと倒産するのは、人が心筋梗塞で突然死するようなものです。会社にとって、お金は血液と同じですので、社長が資金繰りを気にせず豪遊しだすと、儲かっている会社といえども「金持ち倒産」への道をまっしぐらに進んでいくことになります。