だが、本番はここからだ。半日くらいで再び高熱(多くは39.5度以上)が出て、はしか特有の赤い発疹が出てくる。最初は耳の後ろ、首、額などだが、みるみるうちに増えていく。2日後くらいには手足の先まで、全身に広がる。この間も高熱は続き、風邪に似た症状はますます強まり、発疹はつながってしまうほどにひどくなる。

 合併症がなければ、発疹が出てから3~4日で熱が下がり、7~10日後には主な症状は治まっていく。しかし、合併症はなくても症状が激烈で入院が必要になることもある。体力を大きく消耗し、回復に1カ月かかる人も珍しくない。発疹の痕も茶色いシミのように、しばらくは残ってしまう。

 さらに3割の人は合併症に苦しむ。半数は肺炎で、わずかながら脳炎も生じる。はしかによる2大死因だ。肺炎は、はしかのウイルスによるものの他、細菌の2次感染や、免疫機能が不十分な人に起こる。脳炎は、発生率こそ0.1%未満だが、発症すると20%の人は麻痺(まひ)などの後遺症が残り、15%が死亡する。

10年後に発症・死亡!?
他の病気の抗体減少も

 はしかが恐ろしいのは、かかったときだけではない。実は、回復してもまだ安心できない。

 亜急性硬化性全脳炎は、はしかにかかってから7~10年で発症する。患者10万人に1例と、頻度としては低い。だが、知能障害や運動障害が徐々に進み、発症から平均6~9カ月で死亡するという、恐ろしい合併症だ。メカニズムはまだ解明されていない。脳細胞などにひそかに感染が続く結果ではないかと考えられている。

 また、昨年11月には世界3大学術誌の1つである『Science』誌に、「はしかのウイルスは過去にかかった病気の免疫を『忘れさせる』」とした論文が掲載され、大きな話題を呼んだ。2013年にオランダではしか大流行した際、子供たち77人から感染前後に血液を採取してあった。それをハーバード大学の研究チームが分析したものだ。

 その結果、病原体に対する獲得済みの抗体が、種類にして平均2割失われていた。ひどい子どもでは、ウイルス全般に対する免疫が7割以上も減弱していた。ワクチン未接種でもはしかにかからなかった5人の子どもと、その他100人の比較対照の子どもや大人には、こうした現象は見られなかった。

 日本でも、はしかにかかるとリンパ球機能などの免疫力が低下し、しばらくは他の感染症まで重症化しやすいことが、以前から知られていた。その知見ともきれいに合致する。

 さらに、このオランダの事例では、はしかワクチンの接種を事前に受けていた子どもたちには、抗体減少は一切起きなかった。

 要するに、はしかは「ワクチン接種によって全力で回避すべき」感染症ということだ。はしかのウイルスに抗体を持たずに接すれば、感染・発症はまず免れず、症状はきつく、自分が感染源となる可能性も高く、そして後々まで体調不良や不安が付きまとう。