東京が選ばれたことと、バッハ政権成立の深いつながり

 東京五輪2020が決まったIOC総会で、第9代IOC会長に6人が立候補するという激戦を制したトマス・バッハ氏。実はバッハ政権成立と東京五輪決定とは深く結びついている。

 2020年五輪開催都市は2013年9月7日に決まり、会長選挙はその3日後だった。開催立候補都市に残ったのはスペインのマドリード、トルコのイスタンブール、そして東京だったが、バッハ氏を会長に選ぶためには、開催都市を東京にする必要があった。

 というのも、会長選挙の投票権を持つ約100人のIOC委員の思考を制する唯一の正当な基準はオリンピック理念だからだ。

 五輪と訳されるオリンピックシンボルは、五大陸が結ばれている姿を象徴している。スポーツにおける五大陸はヨーロッパ、アメリカ、アジア、オセアニア、アフリカで、それぞれNOC(国内オリンピック委員会)の大陸連合を持っている。候補地マドリードもイスタンブールもヨーロッパに属するし、バッハ氏もヨーロッパ大陸連合に属する。よって、バッハ氏を会長に選ぶなら、開催都市には、同大陸のマドリード、イスタンブールを選ばないというバランス感覚が働く。

 逆に、東京が選ばれれば、IOC会長はアジア大陸以外から選ぼうとするので、バッハ氏の確率が高くなるというわけだ。五つの輪のバランスを重んずるIOC委員のマジョリティーは、大陸間のバランスを考える。バッハ氏も自らの当選を確実にするために、会長選の3日前に決まる開催都市を東京にするために働く。

 そして彼の選挙活動と東京五輪招致が相互扶助関係になるというわけだ。

バッハ会長の掲げる「アジェンダ2020」への評価

 バッハ会長は、オリンピックの抱えるさまざまな問題を改善すべく世界中に意見を求め40項目の改革案にまとめた「アジェンダ2020(五輪改革綱領)」を提げていた。バッハ会長にとって、東京オリンピックは自らが果たすべき使命を成し遂げる五輪であった。東京五輪は開催決定の出自からバッハ氏と共にあったのである。

 この「アジェンダ2020」の総括が20年12月7日のIOC理事会で発表された。来年3月のIOC総会に付議される。五輪招致経費の削減、五輪開催経費の縮小、男女平等化、選手保護と教育、ガバナンス改善、国連との関係強化、地球気候対策などについて85%を達成できたとしている。

 例えば、招致経費の削減は2022年冬季の場合は、3500万ドルかかったところ、2026年冬季では500万ドルに収めた。五輪種目数の男女平等は東京五輪で48.8%まで達成できるが、パリ五輪では完全同数になる。オリンピック憲章の認知、オリンピック、パラリンピックが世界の平和と発展のための特別な手段であること、スポーツの自律とオリンピック運動、パラリンピック運動への支援などを国連決議にまで持っていった。

 「アジェンダ2020」の重要項目の一つは五輪招致活動の見直しだった。オリンピックの招致活動という特殊な業務の専門家たちの間で過当競争が生じ、その契約料の高騰が問題となっていた。そこで、アジェンダにはコンサルタントやロビイストの登録が求められ、彼らにIOC倫理規定と行動規範の順守を求める項目が入っている。IOCがロビーイングを監視できる体制を作ったのだ。