ソニーのアニメビジネスの特徴と強みはおおむねこの記事に同意するが、誰でもいきなりソニーと同じようなやり方で儲けることはできない。そこには経路依存的なソニーのさまざまな経験と資源の蓄積がある。

 株主総会では、シナジーのないムダなグループ会社と指摘され、売却まで求められたが、こうした現在のソニーグループ各社がさまざまな独自のビジネスを展開してきたお陰で、ソニーが『鬼滅の刃』で儲けることができるオープンなエコシステムを形成することができたといえる。

アニメと音楽を縦横無尽に
コラボさせた独自のビジネスモデル

『鬼滅の刃』のソニーにおける成功には複雑な要因が存在していて、ひと言では表し切れないが、その1つは長年のアニメ制作の歴史である。

 ソニーは1980年代にソニー・ビデオソフトウエアインターナショナルというビデオソフト制作の子会社をつくり、1986年に初のアニメ作品を公開している。この会社はその後、現在のソニー・ミュージックに吸収合併されているが、1995年にはソニー・ピクチャーズの関連会社としてSPE・ミュージックパブリッシング(後にSPE・ビジュアルワークスに解消)を設立、2000年代にSPE・ビジュアルワークスがソニー・ミュージックのグループ会社となったことを契機に、アニメ制作部門として現在のアニプレックスが設立される。

 アニプレックスは代表作を挙げるのが難しいほど、多くのアニメ作品を世に送り出してきたが、『鬼滅の刃』のテレビシリーズも劇場版も、アニメ化を手がけたのはアニプレックスだ。ソニーが制作した初期の作品にはそれほど有名なものはなかったが、30年かけて日本を代表するアニメ制作会社を育てたことになる。

 2016年の連載開始当時、今ほどのブームになるとは誰も予想していなかった頃に、『鬼滅の刃』に目をつけ、アニメ化を企画できたのも、こうした長年のアニメビジネスの経験があってこそだろう。冒頭に述べたが、『鬼滅の刃』の見せどころは戦闘シーンであり、呼吸と型の組み合わせの技の披露である。マンガでもその迫力は十分に表現されているが、動画ではさらに迫力と臨場感が増す。まさにアニメ向きの原作を選んだといえる。

 ビジネスの話に戻るが、現在のアニプレックスがソニー・ピクチャーズではなく、ソニー・ミュージックのグループ会社であることも、ソニーに収益をもたらすもう1つの要因となっている。『鬼滅の刃』のテレビシリーズの主題歌はLiSAの歌う『紅蓮華』で、ミリオンセラーを記録している。現在公開されている劇場版の主題歌もLiSAの歌う『炎』だ。