伊藤忠商事は子会社を通じ、雇用主の代わりに前払い給与を立て替える事業に参入する。コロナ禍で雇用情勢が悪化する中、非正規労働者を中心に給与前払いの需要は拡大中。既にスタートアップ勢のサービスが乱立するが、後発の伊藤忠は圧倒的に安い手数料でユーザーの“総取り”をもくろむ。その狙いは何か。(ダイヤモンド編集部 重石岳史)
立て替えの給与前払いサービス
コロナ禍の雇用情勢悪化で需要拡大
給与前払いサービスは、企業で働く従業員がスマートフォン(スマホ)のアプリなどで申請すれば、特定の給料日を待たずに働いた分の給与をいつでも受け取れる。非正規雇用の若年層を中心に利用が拡大しており、人手不足に悩む企業にとっては多様化する働き方に対応し、人材確保につなげられるメリットがある。
伊藤忠商事は2019年6月、完全子会社のマネーコミュニケーションズを通じて給与前払いサービス事業に参入。「プリポケ」のサービス名で地方銀行やネット銀行との提携を進め、導入企業を増やしている。現在サービスを提供する従業員は約5万人に上る。
これまでマネーコミュニケーションズが行ってきたサービスは、導入企業の銀行口座から給与を支払う「直接払い型」と呼ばれるものだった。大手銀行も同様のサービスを手掛けており、特に東京都を地盤とするきらぼし銀行のサービス対象者は100万人規模に上るとされる。
ただしこの直接払い型は、給料日前に資金が流出するため企業側の負担が大きい。そこで近年、スタートアップが次々に始めたのが「立て替え払い型」と呼ばれるスキームだ。