ちょっと抜けているくらいが
ちょうどいい
川原:大先輩がそう言ってくださるのは、心から嬉しいです。僕たちの世代は生まれた時から不況続きでしたし、社会人になってからもおいしい経験はしてこなかった。だから楽観もしなければ悲観もしないけれど、このままでいいとは到底思っていない。自分たちの子どもの世代に、同じ社会を受け渡したいとは全然思えないんですよね。
最近は同世代が一部上場企業の社長になったり、国会議員になったりと、世の中のリーダーシップをとれるようになってきて、斬新な改革に挑もうともしている。でも、その時に壁になるのがやはり上の世代で……。中野さんのような立場の方が「いいから、若いやつらに任せておけ」と言ってくださるのが、本当にありがたいです。
中野:今、30年後の世界を予測するデータを集めているところなんですけれどね、おそらくその頃には土地に根付いた国という概念はなくなって、散歩する感覚でアジアと日本を行き来するようになるでしょう。そんな未来への転換を、今の20代・30代は難なくできるはずです。40代以降の世代にも、もちろん果たせる役割はある。要はそれぞれの役割を自覚して、それ以外のものを手放せるかが大事なんですよ。
中野さんの秘書:これ(襟の乱れ)、どうします? 整えましょうか?
中野:あまりちゃんとし過ぎないほうがいいんじゃない? 人は完璧に整えるより、ちょっと抜けているくらいがちょうどいいんだから(笑)
川原:いいですね、その抜け感。チャーミングですし、その姿勢に共感します。大人がちょっと抜けた姿を見せてくれると、僕らはホッとできます。
中野:僕はチャームポイントだらけですよ。例えば、お菓子の袋を開けるとき。年を取ると力を入れないと開けられないので、ついフルパワーでやっちゃって盛大に中身をこぼしちゃう(笑)。
川原:全部完璧にされると、周りはとっつきづらくなってしまいますからね。
中野:ファッションもそう。きちんとした上で、あえて崩す。人と会う時は、鏡の前でちゃんと服装を整えて、頬の筋肉も下がっていないかチェックした上で、30分くらいは普段通りに過ごす。ちょっと崩したくらいが、愛嬌があるでしょう。