あまりに近視眼的になると
会社は尻つぼみに

御立:対極的なのはマネジメントシンドロームです。
役割、KPI、予算を決め、自分の担当した仕事を100%やりきります。こういう方法は随分増えましたが、これだと実はやりきれません。なぜならKPI、予算が1年分しかないからです。これでは5年先を見た人材育成は絶対にできません。

土屋:じつはワークマンでもKPIを活用していた時代がありました。
KPIの達成によって月次で表彰し、報奨金を出していました。でも、そのやり方では1ヵ月単位でしかものを考えなくなります。そこで与えられたKPIを実行するのではなく、現場で仮説検証するやり方に、インセンティブは毎月の報奨金ではなく賃上げに変えました。

御立:それは画期的ですね。

土屋:ボーナスや奨励金だけでは社員が感激しないです。本給の賃上げにすれば会社の本気度が社員に伝わると思いました。
また、時間軸があまりにも短いと考えが狭くなりがち。経営者が四半期決算しか考えなければ会社は尻つぼみになるでしょうし、営業マンが1ヵ月ノルマの達成しか考えなければ仕事はおもしろくないでしょう。

御立:今企業に必要なのは、経営計画のシナリオを、複数の視点、複数の時間軸をもちながらつくることでしょう。これができると株主や親会社にしたたかなストーリーを語れます。
反対にこうしたシナリオを持っていないと、株主や親会社に従わざるをえなくなります。そうなると、仮に「兆し」をつかんでも、経営計画を実行することができません。