ビジネスからの学びが組織内部に積み重ねられて、
事業力は強化される

 そもそも「組織」は事業の発展に伴い多岐にわたり、より専門化が進む業務を手分けして分業するためのものです。特に事業の発展段階は、組織の急拡大が求められます。

 この時に経営側が、いかに組織に自律的に判断させ、機能するように育てたか、この一点だけで、その後の事業の発展と安定性には、天と地ほどの差がつきます。

 組織の目指す姿は、以下の二つに集約できます。
(1)「攻め」の方法も含めた業務の手順を組み立て、それを進化させ続ける
(2)個々人の問題解決力とマネジャーのマネジメント力を正しく鍛え、上下方向で組織力の強化を行う

 しかし、事業の拡大期においてはトップ自ら、まるで自身のKPI(Key Performance Indicator、業績評価のための重要指標)を追いかけるがごとく、(1)(2)はそっちのけで、事業規模の拡大に集中しがちです。事業に成功した直後は、特にこの傾向が顕著になります。

 事業視点でのプランニングも判断もトップが行い、現場に対して一方的な「落とし込み」、つまり’Do this’「これをやりなさい」の指示が続けられます。

 しかしながら、切り口のユニークさに頼った戦略の成功と、勢いのある営業力による「面の拡大」だけでは、早晩、事業の失速は免れなくなります。

 市場は常に変化しています。
・より安く、より優れた製品やサービスを提供する同業、新たなる競合の出現
・常に良いものを求める、顧客の潜在的、顕在的な要望レベルの向上
・今回のコロナ禍に代表される、予期していなかった外部環境の変化

 これらの変化の影響を読み、「顧客の顔が見えている」責任者が、事実をもとに最も腹落ちする仮説を基にプランニングを行い、実施の結果を振り返り、成功則を磨き上げて、売り方や商品開発について次の手を打つ。

 この繰り返し、つまり、PDCAサイクルを廻すことによってのみ、ビジネスからの学びが組織内部に積み重ねられて、事業力の強化が進むのです。

この項つづく