「人間関係」がつらかったり、「空間自体」がつらかったり

加藤 具体的には、どういう場面で、どんな理由が考えられるんですか?

借金玉「朝、着替えができない」っていうのも、着替えそのものができない場合もあれば、毎日、いろんなことをするのに圧倒されていて、「新しい一日が始まってしまうこと自体を嫌がっている」ということもあり得ます。

 そういう場合には「今日一日、これとこれをやればいいよ」という見通しが立つと安心して着替えられるとか、そういうことがあるんですよ。

加藤 なるほど。そんなさまざまな理由があるってことですね。実際、発達障害の子で、いろんな理由で学校に行けなくなっちゃうケースは多いですもんね。

借金玉「人間関係そのものがつらい」という場合もあれば、知覚が敏感な子は「学校という空間に耐えられない」ってこともあります。

 学校って、人と人の距離が非常に近いじゃないですか。あのくらい密集したところで動物を飼ったら、たいていの生き物は死にますからね。そういう意味ではなかなかなストレスのかかる場なんですよ。

加藤 たしかに、冷静に考えてみると、ゾッとしますね。

借金玉 コウロギでも、あんなにギュウギュウ詰めで飼ったら限界超えますよ(笑)。

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加藤紀子(かとう・のりこ)
1973年京都市出まれ。1996年東京大学経済学部卒業。国際電信電話(現KDDI)に入社。その後、渡米。帰国後は中学受験、海外大学進学、国際バカロレア、教育分野を中心に「NewsPicks」「プレジデントFamily」「ReseMom(リセマム)」「ダイヤモンド・オンライン」などさまざまなメディアで旺盛な取材、執筆を続けている。一男一女の母。膨大な資料と取材から「いま一番子どものためになること」をまとめた『子育てベスト100──「最先端の新常識×子どもに一番大事なこと」が1冊で全部丸わかり』が16万部を超える大きな話題となっている。

借金玉(しゃっきんだま)
1985年、北海道生まれ。ADHD(注意欠如・多動症)と診断されコンサータを服用して暮らす発達障害者。二次障害に双極性障害。幼少期から社会適応がまるでできず、小学校、中学校と不登校をくりかえし、高校は落第寸前で卒業。極貧シェアハウス生活を経て、早稲田大学に入学。卒業後、大手金融機関に就職するが、何ひとつ仕事ができず2年で退職。その後、かき集めた出資金を元手に一発逆転を狙って飲食業界で起業、貿易事業等に進出し経営を多角化。一時は従業員が10人ほどまで拡大し波に乗るも、いろいろなつらいことがあって事業破綻。2000万円の借金を抱える。飛び降りるためのビルを探すなどの日々を送ったが、1年かけて「うつの底」からはい出し、非正規雇用の不動産営業マンとして働き始める。現在は、不動産営業とライター・作家業をかけ持ちする。最新刊は『発達障害サバイバルガイド──「あたりまえ」がやれない僕らがどうにか生きていくコツ47』