LCA議論の間違い

 ここまで、EV議論で引き合いにだされるLCA(ライフサイクルアセスメント)に関する議論をしてこなかった。理由は、LCAについてはすでに多方面から分析され、議論もされている。また、考慮すべきパラメータが多すぎて、統計データの積み上げだけでは本当のCO2削減効果がわかりにくく、指標とするデータのとり方で、いかようにも計算可能だからだ。

 WtW(Well to Wheel)やLCAによって現状を分析は可能になる。実際、現状では内燃機関が優位だとして、分析するための指標を固定し、内燃機関にこだわるのか、指標を変えてEVをとり入れるのか。いずれも成立はする。ただし、指標を固定してしまうと、発展や成長よりも停滞につながる可能性がある。日本の産業界は、様々な分野で従来の指標に固執しすぎたことで、苦い経験をしてきたはずだ。

 欧州のLCA議論は、自動車産業の指標というよりエネルギー政策や産業構造全体を見ている。メーカーや業界ごとの思惑はもちろんあるが、CO2総量の削減という視点で再生可能エネルギーにシフトすれば、自動車含む産業の成長を維持できるというのが彼らの方向性だ。日本のLCA議論は主に既存自動車産業の保護の視点で語られているので、EVと非EVという妙な対立構造が生まれてしまっている。

 そもそも、CO2排出という点では、HVもEVも大した違いはない。例えばLCAやWtWによるHV、EVのCO2排出量の比較によく利用される日本機械学会の論文でも、HVが96g-CO2/kmに対しEVは100g-CO2/kmと4gほどの差しかない。日本のEVがLCAでHVに劣るのは、電力発電を化石燃料に頼っているからだ。政府は脱石炭火力発電を宣言しているため、この数字はいずれ逆転するだろう。

 EVの良さは環境性能ではない。モータートルクによる過渡特性(加速)、経済性、静粛性は内燃機関車にはない魅力がある。新しいパワートレインや技術を業界の都合で排除するより、新しい市場として育てたほうが建設的だ。今の市場で売れないのなら、それは新しい市場なのだ。