(2)奥歯が無いと摂取できる食べ物が限られ、脳の健康に必要な栄養素が不足する

 奥歯が無くなると、堅いものが噛めなくなるために食べられないものが増え、そのために食事のバランスが悪くなります。その結果、認知症を防ぐ栄養素であるビタミンなどが不足してしまうのです。

(3)奥歯を失うおもな原因となる歯周病が、脳に悪影響を与える

 歯を失う原因で最も多いのが歯周病です。とくに奥歯は歯周病になりやすく、歯周病になると歯ぐきが慢性的な炎症状態になります。慢性的な炎症によって生み出される物質(炎症性サイトカイン)や、歯周病の原因菌(以下、歯周病菌)が出す毒素、歯周病菌を退治するために出される活性酸素などが、血管に入って脳に運ばれ、さまざまな悪影響を及ぼすことが指摘されています。

 それだけでなく、近年、アルツハイマー型認知症の患者の脳から歯周病菌が見つかっており、歯周病菌自体が認知症を引き起こす原因になっていると考えられています。

 このように、「奥歯を失うことが認知症のリスクを高める」ことがご理解いただけたと思います。

奥歯を失う原因の第1位は「歯周病」

 70歳以上の高齢者の5割は「奥歯が1本以上無い」というデータがあります。そして、奥歯を失う最大の原因は「歯周病」です。

 歯周病の直接の原因は、歯垢(プラーク)。歯垢とは、歯の表面に付着している細菌のかたまりのことです。口の中にいるむし歯菌などの細菌は、砂糖などの糖分を栄養にして増殖する際に、ネバネバした多糖体を放出します。それによってしっかり歯に貼り付いているため、うがいをしたくらいでは除去できません。