「身内が生活保護を受けるのは恥」
という根強い拒否反応

 そこに、扶養照会をされた家族の事情が重なる。地域によっては、「身内が生活保護を受けるなんて恥」という意識が強い場合もある。生活保護を申請したり利用したりしたことを理由として「縁切り」するという話は、2021年現在の日本でも珍しくない。「自分が扶養します」と役所に申し出て本人に生活保護の申請を取り下げさせ、実際の扶養は行わずに見捨てるという最悪のパターンもある。

 さらに、そもそも血縁者との付き合いが絶えており、正確な住所や年齢を思い出せないという場合もある。厚労省は、「過去20年にわたって付き合いがない場合には扶養照会をしなくてよい」としている。さらに、自治体の判断で「付き合いがない」とする範囲を拡大する場合もある。東京都は「過去10年間」としている。

 扶養照会は、福祉事務所にとっても多大な負担となる。生活保護の申請から原則2週間で可否を判定し、保護を開始しなくてはならないからだ。とはいえ、東京都内の生活保護の現場で長年働いてきた経験を持つ社会福祉士の田川英信さんは、「自治体によって作業量は大きく異なるだろうと思います」という。

「扶養照会をするかどうか、どの親族に扶養照会するのかは、精査して判断します。精査の基本は、ご本人からの聞き取りです。親族を精査して絞り込んでから扶養照会する場合、それほど時間はかかりません」(田川さん)

 生活に困窮した家族の面倒を見ることは、民法上の義務ではある。しかし、「自分の身を削っても」という強い扶養義務があるのは、夫妻相互の間、そして未成熟の子に対する親だけだ。その他の「三親等内」の扶養義務は、「無理のない範囲で援助することが望ましい」という弱い扶養義務である。

「精査せず、扶養義務者の全員に機械的に照会することは求められていないのですが、そういう方針をとる自治体の場合、作業量が大きくなります」(田川さん)