米国のビジネススクールの講師である著者が、グローバル人材のための「決算書の読み方」を伝授する本連載。今回は基礎編で学んだ決算書をベースに、企業のビジネスモデルを検証していきます。
本稿は、決算書のエバンジェリスト(伝道師)である大手町のランダムウォーカーさんと会計コラボレーションイベントをしたときの一部コンテンツを抜粋したものです。「海外決算書を読み解く」のような難解なメッセージではなく、クイズを通じて企業のビジネスをイメージすることで、皆さんにもっと海外企業のビジネスを知ってもらえればと思います。
今回はGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム)ではありませんが、GAFAに引けを取らない利益率をたたき出す「あの会社」を題材にビジネスモデルを検証していきたいと思います。
GAFA級の超高利益率を誇る
ネオ金融会社のビジネスモデル
というわけで、本日は金融業界の決算書を取り上げてみたいと思います。とはいっても、伝統的な金融である投資銀行(ゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーなど)や商業銀行(シティバンクやJPモルガン、バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチなど)の決算書は、そのビジネスの特性から非金融業界の決算書とは中身が全く異なるものになるため本稿では取り扱いません。
その代わりに、比較的歴史の浅い「ネオ金融会社」、VISA(ビザ)とPayPal(ペイパル)の2社を比較してみたいと思います。この2社は、金融クラスターに属しているものの、ビジネスが非金融業界と近いためです。
それでは、早速クイズです。以下の損益計算書(PL)のイメージ図を見て、(1)と(2)のどちらがVISAでどちらがPayPalなのかを答えてみてください。
ここでヒントとして、企業のビジネス概要を整理します。
●VISA・・・1958年にバンク・オブ・アメリカがBANK AMERICARDを設立し、76年に名称を現在のVISAに変更しました。主な事業は、クレジット決済機能を提携企業に提供することです。2020年9月時点での世界でのクレジットカード発行枚数は34億枚以上で、世界の5000万を超える店舗で利用可能となっています。
●Paypal・・・98年、フィンテック黎明期に誕生し、メールアドレスとインターネットを使って決済サービスを開始しました。登録をして支払い方法を選択すれば、世界の2400万以上のショップで使うことが可能。また、PayPalユーザー間での送金やクレジットカード入金・送金サービスも提供しています。
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