国内の強硬派は「中国への譲歩」というだろう。領土問題があることすら認めていないのが、日本政府の方針だからだ。紛争があることを認め、共同管理など「噴飯もの」という議論が盛り上がるだろう。だが、それを乗り越える度量と長期的展望こそ、日本が国際社会で名誉ある地位を築く足がかりになる。

 領土問題は双方に言い分があり白黒を明確につけにくい。大事なことは領土という古傷を新たな紛争の芽にするのではなく、過去を乗り越える「解け合い」の足がかりにする知恵だ。紛争の火種だった尖閣諸島を、資源探査や採掘を共同で行う友好のシンボルにすることこそ、この地域の平和構築につながる。

お手本はEUにあり

 お手本はEUにある。共通通貨ユーロを抱え込みギリシャやスペインの債務危機という困難に直面しているが、欧州がまた戦争を起こす、と考える人はまずいない。だがこの地域は北東アジアに比べものにならないほど、領土を巡る戦争を繰り返してきた。

 戦争は一時の解決になっても、恨みを残し次の戦争を準備する。その愚を繰り返さないために、欧州共同体は資源の国際管理から生まれた。その典型がドイツとフランスの国境にあるアルザス・ロレーヌ地域である。

 鉄と石炭の産地で武力による奪い合いが繰り返され、国境線は何度か変更された。EUは戦争の原因となった鉄などの資源を共同で管理することで武力衝突を避ける、という知恵を編み出した。いまアルザス・ロレーヌの中心であるストラスブールには、統合の象徴であるEU議会が置かれている。

 中国と日本はフランスとドイツのような関係にすぐになれるわけではない。反日暴動や略奪で見る中国は、つき合いを遠慮したい相手である。高圧的な外交姿勢、拝金主義、傍若無人な資源買い漁りなどに、多くの日本人は違和感を覚える。だが、翻ってみればエコノミックアニマルと呼ばれた一時の日本人に、似た現象もあった。