建国で手一杯だった時期に、先進国は様々な国際ルールをつくった。たとえば、中国は世界3番目の領土(陸地)を持ちながら、排他的経済水域は15番目だ。隣の日本は中国の5倍の経済水域を持っている。70年代に決まった海洋ルールに従えばこうなるが、中国が飢えと闘っている間に不利な取り決めをつくられた、と思っている。

 かつて海洋は漁業が主な経済活動だったが、いまは海底資源の時代。工業化で膨大な資源・エネルギーを消費する中国にとって、海洋権益は「核心的利益」につながる。

 改革開放政策を経て、大儲けする企業が力を持つようになった。典型が中国石化などの国営石油会社だ。途上国での採掘権を買い漁るなど国際的にも存在感を高め、豊富な資金をバックに政権内で発言力を強め、海洋膨張策を後押ししている。

 これに同調して、人民解放軍内で海軍の強化が目立つ。台湾と緊張関係が続いていた頃から、米国の第7艦隊が黄海や東シナ海に張り出し、中国を封じ込めていた。これを押し戻そうというのが当面の課題となっている。

 帝国主義によって蚕食された「屈辱100年の歴史」を挽回したいという国家意識が、海洋膨張策の底流にある。

 とはいえ、武力で奪える時代ではない。共産党政権の存立さえ危ぶまれているときである。膨脹政策は政権内の強硬派の動きであって、不変のものではない。経済運営で綱渡りを強いられるときであるからこそ、外国の協力が要る。

 日本の対中外交は中国と向き合うより、アメリカの舵取りに委ねられることが多かった。ホワイトハウスの利害に日本の対中関係が左右された。その中で友好の窓口を開いた田中角栄の訪中など、日本独自の自主外交もあった。

尖閣を巡る中国との関係改善は、米国に追従する外交姿勢の問い直しと不可分の課題でもある。