1.社員が成長する
人事異動を行えば、日々新たな体験をするので、失敗から学びます。
子どもの成長が早いのは、幼稚園→小学校→中学校→高校→大学と、成育環境が強制的に変えられ、知らなかったことやできなかったことができるようになるから。当社の人事異動もそれと同じ理屈です。
個人の適性を生かしながら、強制的に異動させる。だから実力が養われます。
2.ダブルキャストが実現する
部署Aにいた社員が部署Bに異動になると、部署Aの仕事も、部署Bの仕事も両方できるようになり、ダブルキャストが実現します。同じ役をこなせる人が2人いると、滞っている作業に応援を出せるので、作業時間も短縮します。
3.モンスター社員、モンスターパート、派閥がなくなる
職場に派閥ができるのは、人事異動がないからです。同じ部署に長くいると、「お局様」「ボス」「モンスターパート」が生まれ、その人を中心に派閥ができます。当社に派閥がないのは、担当の仕事を頻繁に変えたり、シフトを固定したりしないからです。
4.離職防止につながる
社員が会社を辞める理由は、おもに「1 仕事が嫌で辞める」「2 上司が嫌で辞める」「3 会社が嫌で辞める」の3つに大別できます。
このうち、「1」と「2」は人事異動で対処可能です。
「1」(仕事が嫌で辞める)は、人事異動で仕事内容を変えれば防げます。
「2」(上司が嫌で辞める)は、上司と部下の間にコミュニケーション不全が起きています。
わが社には、「課長職3年定年制ルール」(経営計画書に明記)があります。
嫌いな課長の下についても、「長くて3年で、あの課長は別の部署に異動になる」ことがわかっていれば、部下は辞めずに我慢できます。
最近は心理分析の結果から、「今の若い人は、同じことをやり続けると不安になり、ストレスを感じやすい」ことが明らかになっています。
そこで「新卒社員は1年以内に異動」させています。
同じ仕事ばかりだと、若手社員の離職原因になるからです。
5.社員の「不正」がなくなる
人事異動がないと、仕事が「属人化」します。
属人化は、ある仕事を特定の人だけが担当し、その人にしかやり方がわからない状態です。属人化すると、ブラックボックス化して不正の温床になりかねません。
経理の不正を防ぐには、ひとりに同じ業務をさせずに、入金と出金業務を分け、2年経ったらその業務担当を入れ換えます。
6.「仕事ができる人」のモチベーションが下がらない
当社は、職場のNo.1、No.2(成績優秀者、昇格者)を積極的に異動させます。
仕事ができる人を高速回転・高速異動させると、彼らはさらに伸びます。
専務の矢島茂人は入社後“10年間で9回”異動しています。
仕事ができる人は、何をやらせてもすぐに習熟する一方、同じことを続けさせるとすぐに飽きてしまう。
彼らのモチベーションを下げないためにも、定期的な人事異動が必要です。
7.組織の弱点が見つかる
組織(部署)に弱点があっても、マンパワーのある社員が担当していると、その社員が弱点をカバーしてしまうため、組織の問題点が隠れてしまいます。
人事異動によりマンパワーの弱い人材を配置すれば、組織の弱点が浮き彫りになるため、抜本的、本質的な改善を図ることができます。
8.社員の適性(向き不向き)がわかる
わが社では、「エナジャイザー」や「エマジェネティックス」という分析ツールを導入して、社員の業務能力や価値観、思考能力、行動特性など個人の特性を明らかにしています。分析ツールを使って適性検査を行えば、ある程度、個人の特性や資質を把握できます。とはいえ、仕事はやらせてみなければ、わからない。そこで、課長職までは頻繁に人事異動を繰り返し、適性を見極めるようにしているのです。