コロナ最前線で戦う病院は2割程度
ワクチン接種は全ての医療従事者に

 すでに多くの人が指摘しているように、今コロナ医療の最前線で寝る間も惜しんで戦っている医療機関は、全体の2割程度しかない。実際、昨年11月の「地域医療構想に関するワーキンググループ」で、全国7307医療機関のうちコロナ患者の「受入実績なし」の医療機関は5954施設(81%)という、衝撃的な数字が明らかになっている。

 では、その2割程度の医療機関で370万人もの医療従事者が働いているのかというと、そんなことはありえない。「令和2年版厚生労働白書」の「医療関係従事者数」によれば、現在日本の医師は31万1963人、歯科医師が10万1777人、看護師・准看護師は155万8340人、薬剤師は24万371人、保健師は6万2118人、助産師は3万9613人、救急救命士は5万6415人となっている。

 これをすべて足して、医療現場に欠かせすことができない理学療法士や臨床検査技師などの方たち約31万人、就業歯科衛生士やはりきゅう師など約60万を加えても、約328万人にしかならないのだ。

 つまり、ワクチンが優先接種される「医療従事者約370万人」とは、日本のすべての医療従事者はもちろん、事務員の方たちなど医療機関で働くあらゆる人たちをカバーした数字の可能性があるのだ。

 こういうザックリとした優先接種が「緊急事態」にそぐわないことは、2009年に新型インフルエンザが世界的流行した際のワクチン接種の優先順位を見ればわかる。そこには最優先される人々として、「インフルエンザ患者の診療に直接従事する医療従事者(救急隊員含む)約100万人」(平成22年5月19日 第5回新型インフルエンザ(A/H1N1)対策統括会議資料)とあり、その次は重症化リスクの高い妊婦や基礎疾患のある人への接種にとなっているのだ。

 コロナはいまだに「2類相当の指定感染症」なので、インフルエンザよりもはるかに「患者の治療に直接従事する医療従事者」は少ない。これからワクチン事業に協力する「かかりつけ医」や看護師に接種するとしても、「約370万人」は明らかにやりすぎだ。

 ということを指摘すると、「コロナ対応をしている者も、地域医療を支える者も、コロナ禍の中で医療を支えているのだから、最優先でワクチンを打って何が悪い!」というお叱りが飛んできそうだが、筆者は何も「コロナ対応していない医療従事者にワクチン接種など必要がない」などと主張しているわけではない。