日本医師会新型コロナのワクチン接種の方針で、それほど急いで接種する必要がないと思える人たちが「最優先」とされるのはなぜか(写真はイメージです) Photo by Masataka Tsuchimoto

コロナワクチンの「政治利用」
今、日本で起きていることとは

 世界中でコロナワクチンの「政治利用」が盛んに行われている。

 中国は、38の発展途上国に中国製ワクチンを援助する予定があることを発表した。インドもすでに自国ワクチンをブータン、バングラディッシュなど近隣国に対して無償提供する取り組みをスタートさせ、ロシアも南米を中心に「スプートニクV」を売り込むなど、各国の「ワクチン外交」が激化しているのだ。

 もちろん、これはワクチンビジネスだけが目的ではない。途上国へのワクチン供給は、その国の公衆衛生事業にガッツリと食い込むことができる。焼け野原になった日本で母子保健などの公衆衛生を整備したアメリカが、その後「栄養バランスがいいよ」と小麦や脱脂粉乳をドッサリと売りつけて食文化を米国化したように、コロナワクチンは「属国化」の先兵とすることができるのだ。

「命を救うワクチンを、そんなくだらないことに利用するなんて」と呆れる方も多いだろう。ただスケールは違えど、実は日本でも似たような「コロナワクチンの政治利用」としか思えないような奇妙な現象が起きている。

 安全性が確認されたらすぐにでも接種した方がいいような重症化リスクの高い人たちが後回しにされ、それほど急いで接種する必要がない人たちが「最優先」とされているのだ。

 その人たちとは、「コロナ対応をしていない医療従事者」である。

 首相官邸のコロナワクチン特設ページによれば、「まずは先行接種として国立病院等において約1万人(最大2万人)の医療従事者に接種を行い、続けて約370万人の医療従事者に接種を行う」とある。その後、約3600万人の高齢者、そして約820万人の基礎疾患を有する人たち、約200万人の高齢者施設従事者と続く。

 こうしたニュースは皆さんもよく耳にしただろうが、実はこの「約370万人の医療従事者」と説明される人たちのほとんどは「コロナ対応をしていない医療従事者」だという説明はほとんどされない。