いち早く企業の変化に気づき、将来、その影響が株価に対して大きそうだと判断できれば、株式の売買へとつながります。そうした過去の延長戦にない「非連続の変化」をとらえて投資機会に結びつけることが機関投資家の存在意義でもあります。
企業の非連続の変化をとらえて投資するアプローチは、海外では「スペシャルシチュエーション投資」として確立されています。
機関投資家は、個人投資家とは異なり、経営者やIR(インベスター・リレーションズ、投資家向け広報)とミーティングを持つことができます。そうした接触の中で、企業のさまざまな変化を知る機会が多く設けられています。一方、個人投資家には、そうした機会が必ずしも平等に与えられているわけではないので、一見不利に見えます。
ただ、企業にとっての大きな変化は、そう毎日起きるわけではありません。もし、そうでなければ、同じ銘柄への長期投資などは行いにくくなります。したがって、社長交代やビジネスモデルの変更というような大きな変化は数年に一度程度と割り切ることも大事かと思います。
スペシャルシチュエーション投資は
「会社が変わったあと」でも遅くない
実際、スペシャルシチュエーション投資では、「会社が変わった」ことを確認してから投資をしても遅くないケースがあります。個人投資家は、その都度、判断するととらえてもよいのではないでしょうか。
ウサギとカメの寓話を投資に当てはめると、こうなります。
ウサギとカメの話は誰でも知っていることでしょう。足の速いウサギは初めのうちは歩みの鈍いカメを大きくリードします。しかし、途中でカメのペースを軽く見て、簡単には抜かれまいと途中で走るのをさぼり、休憩します。ところが、最後には着実に歩みを進めてきたカメに抜かれてしまうというストーリーです。
実は、これは株式投資にも当てはまる内容です。
メディアで話題になりやすいAI(人工知能)などの先端技術を活用していたり、スマホアプリを活用した目新しいサービスなどを展開したりするベンチャー企業の株価は、時として短期間に大きく上昇することがよくあります(もちろん大きく下落することもあるのですが)。
株式市場では、そうした目立つ企業について一時的に熱狂的な反応を示すことがよくありますが、時間とともに冷静な判断を下していくことになります。メディアでの報道や話題ばかりが先行し、業績を伴っていない場合には、株価はじりじりと下がることも少なくありません。
もちろん、そうした銘柄に目を向け、短期的に売買を繰り返すトレーディングに注目する投資家もいるでしょう。また、そうした投資で儲かる人がいるのも事実です。もっとも、短期売買を繰り返す投資家の「人数」自体はそれほど多くありません。
では、10倍株といわれるような株を手にするためには、短期投資、長期投資のどちらが最適なのでしょうか。