あなたはどんな「欲求」にこたえている?

ここまでの話を踏まえて、「正しい仕事の選び方」について話したい。

というのも、こうやって欲求やニーズを押さえていくことが、仕事選びに役に立つからだ。

この世は、必要なもの必要じゃないものに分かれる。

あなたは仕事や会社を選ぶとき、必要なものを選ぶべきだと思ったのではないだろうか。

「電気・ガス・水道などのインフラはなくならない」
「銀行や保険業界は安全だ」
「食品業界は廃れることがない」

これらはすべて、「社会」にとって必要なものだ。

就職活動のとき、誰もが考えることだろう。

あるいは、「自分」にとって必要なものを選んだ人もいるかもしれない。

「音楽がないと生きていけない」
「ゲームばかりしてきたから、ゲーム業界に行きたい」

必要かどうかを考えるときに、後者のように、「自分」が軸になっているほうがいいと僕は思う。

ただ、好きを仕事にするのは、あまりおすすめしない。

業界を選ぶ基準にするのではなく、「体験」として、もう一段階、掘り下げてみよう。

「音楽がやりたい」→「大勢が一体になるライブ感を作りたい
「ゲームを作りたい」→「何も考えずに没頭できる仕組みを生み出したい

そうやって、「体験」に掘り下げると、会社ではなく、「業界」をシフトできる。

「なくなったら困る体験」に人生を捧げよう

「2ちゃんねる」を潰したとしても、「2ちゃんねる的な場所」は存在し続ける。

需要がある限り、サービスは形を変えて残り続ける

イタチごっこになるだけだ。

あなたの家の近くの行きつけの店が潰れたとしても、きっと別の店に通うようになるはずだ。

2ちゃんねるが成功した理由は、「誰しもがひと言だけ言いたい」という欲望があったからだ。

それは、「なくなったら困る体験」だと言うことができる。

これが、仕事をする上で考えるべきことだった。
根幹が何なのか、自分を止められない瞬間は何なのか。
それをつかみ切ることが大事で、好きかどうかはあまり関係がない。

2ちゃんねるのシステム自体は、誰でも作れる。同じスクリプトは誰でも書けるし、似たようなウェブサイトは存在していた。

ただ、なぜそれが面白いかの感覚はちゃんとわかっていた。だから、長く続けることができた、

いくら技術が進歩しても、「使いたい」と思う人がいないとサービスは成立しない

発明王のような人が、「自動卵割り機」みたいな発明をテレビで紹介することがある。これらも、「ないと困る人」がいない。

「2ちゃんねる的な場所」は、なくならない。
「匿名で何かを吐き出す場所」は、絶対に未来永劫、なくなることはない。

ということは、「この体験が、なくなったら困るな」と、あなたがそう強く感じられるものに、人生を捧げてもいいかもしれない

そこに第三者の意見が入る余地はない。
誰がどう思っているかは、どうでもいい。
ほかの誰であろう、「あなた自身」が困るのだから、自分でやる

「喜んでいる人の笑顔が見たい」
「社会の役に立ちたい」
「市場性がある」

こんなものは、すべて後付けだ。就活市場が作り出したキレイゴトに過ぎない

「それがないと自分が困る」

仕事選びの核にあるものは、これしかないのだ。

ひろゆき
本名:西村博之
1976年、神奈川県生まれ。東京都に移り、中央大学へと進学。在学中に、アメリカ・アーカンソー州に留学。1999年、インターネットの匿名掲示板「2ちゃんねる」を開設し、管理人になる。2005年、株式会社ニワンゴの取締役管理人に就任し、「ニコニコ動画」を開始。2009年に「2ちゃんねる」の譲渡を発表。2015年、英語圏最大の匿名掲示板「4chan」の管理人に。2019年、「ペンギン村」をリリース。新刊『1%の努力』(ダイヤモンド社)を刊行。